第二章
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「先生に敗れたその切支丹の者は」
「あの者のことですか」
「敗れて切支丹への信仰を捨ててですか」
「それからどうなったか」
「信仰を捨てたのですな」
「そうしました」
羅山に負けて己の学問だけでなく信仰にも疑問を持ってだ、そうしたというのだ。羅山は旗本にこのことを再び話した。
「それからその者は逆に伴天連の取り締まりに幕府の手伝いをしました」
「変われば変わるものですな」
「逆に伴天連を憎む様になった様ですな」
かつて信仰があったことが逆になってというのだ。
「その様です」
「左様ですか」
「伴天連の者達の中には本朝乗っ取りを企む者がいましたので」
「そのこともあってですか」
「幕府も今も取り締まっておりますし」
それも強くだ、文字通り踏み絵までさせてだ。
「よいことですな」
「全く以て」
幕府の考えからだ、二人は頷き合った。
「それがしもそう思いまする」
「では今より茶を飲み」
「そうしてですな」
「菓子もありますがどうでしょうか」
「はい、それでは」
旗本は羅山の申し出に笑顔で応えた、そうしてだった。
羅山はこの日は旗本と茶を飲み菓子も食べて楽しんだ、この日はこれで終わり後日学問として出島から江戸まで来た阿蘭陀の者に西洋の事情を学問として聞いた、彼が聞いた場所は江戸城の中であったが。
羅山は阿蘭陀人が話す西洋の事情を詳しく聞いてだ、驚いて言った。
「それはまことですか」
「はい」
その通りだとだ、阿蘭陀人は青い目と赤い髭と頭の顔で答えた。顔の彫は深く肌の色は白く身体は大きい。服は完全にあちらのものだ。日本語はたどたどしいところがあるが話せている。
「今あちらは恐ろしい戦の中にあります」
「同じ信仰の者同士がですか」
「互いに殺し合っております」
「切支丹同士で宗派が違うだけで」
「降ることも許されずです」
「信仰を捨ててもですか」
「はい」
そうしてもとだ、阿蘭陀人は羅山に答えた。
「それに構わずです」
「殺しているのですか」
「城、この国では街を全て皆殺しにすることもです」
「あるのですか」
「中には同じ宗派の者もいましたが」
「それは決してあってはならぬこと」
羅山は何とか声を荒げさせなかった、彼の理性がそうさせた。だがそれでも驚きを隠せずに言うのだった。
「宗派が違うだけで殺し合うことだけでも」
「そうお考えですね」
「本朝では考えられぬこと」
「伴天連のこともですね」
「信仰を捨てればです」
それでというのだ。
「よいのです」
「しかし西洋では違います」
「殺してまくってですか」
「はい、それこそ一人残さずです」
殺しているというのだ。
「十字軍もそうでした、仏蘭西でもです」
「同じ宗派の者でもですか」
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