【偽らざる夜更け】
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ネジとヒナタ。
「医療部隊の拠点で、身体を休められる時間がなかったみたいだけど……眼の調子は大丈夫なの、ネジ兄さん」
「あぁ、大した事はない。それよりも、ヒナタ」
先程まで背を向けていた従兄がふと、ヒナタに振り向き不意に強く抱き寄せる。
「ね、ネジ兄さん…!? どうしたの、急に……」
「今、伝えておかなければならない事がある。……これが、最期になるかもしれないから」
耳元の声が、微かに震えているようにヒナタには感じた。
「ダメだよ、ネジ兄さん……。私達は生きて、この戦争を乗り越えるの。最期かもしれないなんて、言わないで……」
慰めるようにネジをぎゅっと抱き返すヒナタ。
「互いに、いつどうなってもおかしくはない……それが戦争だ、だから───」
「ネジ、兄さん……」
「ヒナタ?──死んでくれ」
「……え」
いつの間にかかなりの力で抱き竦められ、耳元で囁かれた言葉にヒナタは背筋が凍りつく思いがした。
鋭利なもので後頭部を刺される瞬間、その刃先は宙を舞い遠くにカランと落ちる前にヒナタは強い力で後方に引っ張られるように抱き竦められていた相手から引き離され、その直後ドスッと鈍い音がして倒れ込む音も耳にした。
「えっ、ネジ兄さんが、二人…!?」
ヒナタは強引に相手から引き離される際、思わず白眼を発動もせずに眼を瞑ってしまったが、次の瞬間に眼を開いて見た光景は、仰向けに倒れているネジとそれを見下ろすように立っているもう一人のネジだった。
(チャクラの性質は、どちらもネジ兄さんそのもので、どちらかが変化しているようには視えないのに……あっ)
倒れている方のネジが見る見るうちに別の存在と化し、昼間大軍で押し寄せた白ゼツだと分かった時には、敵だと見破れなかった自分をヒナタは恥じた。
「──?大丈夫か、ヒナタ」
その落ち着いた声音に、ヒナタは我に返って本物のネジに顔を向ける。
「こいつは、奪ったチャクラの性質すら本人に成りすます事が出来るようだ。感知タイプや白眼ですら、見抜く事は難しい」
冷静に述べる従兄に、先程とは違って安堵感を覚えるヒナタ。
「そう、だったんだね……。様子が少し、おかしいとは思ったけど……私には、偽者だって見抜けなかった」
「無理もない。……とにかくこの事を、他の皆にも知らせなければ」
「うん……。ネジ兄さん、身体と眼の具合は──?」
「俺の事は気にするな、──行こうヒナタ。この戦争はまだ、始まったばかりだ」
《終》
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