「それなら自信があります」
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ことではないが、自分たち以外とは珍しいな――と、ショウキは思わずそちらへ聞き耳をたててしまう。
「『えぬぴーしー』という言葉が分かりますか?」
『……人族特有の言葉だ。興味もない』
「人族、ですか。わかりました。ありがとうございます」
えぬぴーしー――『NPC』。もちろんその言葉は当のNPCである竜人ギルバートへとは通じないが、プレミアはそんな答えこそを求めていたかのように、ペコリと一礼して鉱石集めへと戻っていく。質問の意図が気にならないではないが、わざわざショウキが離れてから聞いた質問ということは、プレミアにとて聞かれたくない話くらいあるだろう。ショウキはそうして関わらないようにする代わりに、ふと、ひどくどうでもいいことが思考に浮かんできていた。
――どうしてギルバートやキズメルは、プレイヤーたちのことを『人族』と呼ぶのだろう?
いや、もちろんプレイヤーの中身は人間だ。ただしそのアバターは、ここ妖精境《アルヴヘイム・オンライン》に住まう妖精なのだ。現にキャリバークエストで出会った女神たちは、プレイヤーのことを『妖精たち』と呼んでいた。
「ショウキ」
「あ、ああ……なんだ?」
「いっぱい集めてきました」
この呼び方の違いは何なのか――とまで考えていたところで、ショウキの視界いっぱいにプレミアが広がった。その両手には袋にぎっしりの鉱石を持っており、褒めてほしそうなドヤ顔でショウキのことを見つめていた。
「……ありがとうな。今、こっちの分も集めるから」
「では手伝います。二人でやれば早く終わるのですから」
その収集率の違いに随分と自分が怠けていたことを自覚したショウキが、慌てて両手の袋を持って鉱石を集め出していこうとした時、すぐさまプレミアから袋を引ったくられてしまう。どうやらプレミアが既に手に入れたものは、自らのストレージにしまったようで――ユイ曰く、ストレージというのはプレイヤーの特権であり、通常のNPCにはそんなものはないそうだが――元気よくプレミアは走り出していった。
「……悪いな」
……結局、何者なんだか。そんな言葉を飲み込みながら、ショウキもプレミアを見習って袋いっぱいに鉱石を詰め込みだした。来る前に空にしておいたストレージがいっぱいになるほどに、いつもならば遠慮がちに採掘するのだが、今回ばかりは根こそぎ持てるだけ鉱石をいただいていく。
「今日は助かった」
『使ってもらう方が《聖樹》もお喜びになるだろう。普段から今日くらい持っていけ』
そうしてギルバートに普段より深々と礼をすると、待っていたとばかりに腕を広げるプレミアを抱え、転移門がある主街区へと飛翔していく。いつもならばプレミアの重さなど感じないも同然なのだが、今日のプレミアに
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