「それなら自信があります」
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生成されない稀少な鉱石を受けとる権利を得ていた。アルゴによれば、この場所で起きた無限に鉱石を採掘できるバグがクエストとなった、などという仮説をたてていたが、そんなことはショウキにとって重要ではなく。寡黙な竜人ギルバートへ、幾つかの小瓶を渡していく。
『……これは?』
「《聖大樹》から湧き出た湯だ。効果があると思うが」
『エルフのものか……ありがたい……』
ただ《聖樹》から無限に鉱石が湧き出てくるとはいえ、無料で貰っていくのは気が引けるということで、この枯れかけの《聖樹》を復活させられるものと交換条件という規則をショウキは自らにかけていた。どんな効能があれば《聖樹》が回復するかはアルゴに聞いていたし、今回はエルフたちの《聖大樹》から湧き出た湯ということもあって、報酬としていただけないかと交渉したキズメルからもお墨付きだ。そして竜人ギルバートの眼力も確かなようで、頷きながら受け取ってもらえる彼に、ショウキはふと質問をしてしまう。
「……ギルバートは、エルフじゃないのか?」
『遠い昔の話だ。かつてはエルフの戦士だったが、膝に矢を受けてしまってな……それでも戦おうと、禁呪で強靭な身体を得たのが我々だ。聖樹を守るために』
……質問をしてから、ショウキはそのことを少し後悔した。最近のプレミアやキズメルのように、NPCらしからぬ者たちと付き合っていたせいで、ついクエストに関係ないことまでをと。しかし予想に反して竜人ギルバートは、特に変な様子もなく昔を懐かしむように語りだした。
『……結末はこんなところだがな。禁呪を用いたものには相応しいが』
「……帰らないのか?」
『今更だな』
そうして独りとなってまで《聖樹》を守るギルバートの姿は、設定によってプログラミングされたものだとはとても思えず、本当に経験してきたかのようなリアルさを感じさせた。まるで本当の人間のようで、人間のように成長したAIと人間に、どんな違いが――
「……悪かった」
――そんなことを考えるのはキリトのような専門家の仕事だ、とショウキは自嘲気味に飛躍していた思考を打ちきり、竜人ギルバートに謝罪して身を翻す。長い間プレミアにばかり鉱石集めを任せてしまったと、ショウキも急ぎ足で《聖樹》から溢れ出す鉱石を集めていく。思えばエルフの領では彼ら彼女らを癒す温泉を生み出す聖大樹が、こちらでは戦うための鉱石を生み出しているというのも、竜人となった彼らの意向を汲んでいるのだろうか。
「ギルバート。わたしも聞きたいことがあるのですが」
『……何だ?』
そうしてショウキが鉱石集めに勤しみ始めると、その機を伺っていたかのように、プレミアがとことこと竜人ギルバートへ歩み寄っていた。プレミアが言葉の意味を知りたがるのは今に始まった
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