「それなら自信があります」
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一回転してみせたレインだったが、あいにくと着なれていなかったのか、マントに足が引っ掛かってあえなく転倒してしまう。頬を紅く染めながらも何事もなかったかのように立ち上がると、咳払いを一つ。
『……特攻効果はエルフの鍛冶屋でも短時間だけつけてもらえるけど、いる集落といない集落があるの。そんなご主人様にはここがオススメ!』
ジャジャーン、といったセルフSEを口ずさみながら、レインはウィンドウを可視化させた。そこにはあまり儲かっているとは思えない、商店街の片隅にある鍛冶屋――リズベット武具店が表示されていて。
『なんとこのお店、エルフの鍛冶スキルを再現しているから、ここでも特攻効果が付与できます! 是非お試しあれー!』
そうして唐突な宣伝を終えて。リズベット武具店の外観と場所を表示したウィンドウは表示させたまま、レインは再び更衣室テントへと戻っていくと、もはや撮影などとは関係ない、自前の鍛えあげた装備へと着替えてくる。番組は番組としてしっかり攻略はするらしく、もはやトレードマークとなった二刀を構えつつ、器用にもカメラに手を振って。
『それじゃあご主人様、応援してね!』
……そうして『アイドル、枳殻虹架のVR探訪』はダンジョン攻略編となり、攻略情報のネタバレが入る可能性があります、などといったテロップによる注意書きが表示される。そのままダンジョンに行くまでの少々、画面がブラックアウトしていき――
――紹介された当のリズベット武具店は、機能を停止していた。閉じられたシャッターには『完売』とだけ急こしらえで作られたPOPが貼り付けられており、店内では店主から助手にアルバイト、なんならその手伝いまでが言葉を失って倒れ伏していた――あくまで比喩表現として。
「買い物は時として『せんじょう』にもなると聞いていましたが、これが……」
「あー……まあ、今回はあながち間違ってないわね」
「頭が痛いです……」
「…………」
リズにプレミア、手伝いに来てくれていたユイは何かしらの言葉で先の戦場を揶揄していたが、ショウキにはもはやそんな元気もなく、ただ無言で大きいため息を吐いた。確かにエルフの鍛冶スキルを再現することが出来れば、少しは売り上げに貢献するかとは考えていたが、まさか根こそぎ奪われるとは思っていなかった。もちろんこの小さな店のため、在庫自体が少なかったということもあるが。
何しろサイドメニューのホットドッグまで全滅だ。ホットドッグ買いの常連と化していたプレイヤーの、「ここってホットドッグ屋じゃなかったのか……」という呟きは、ショウキにとって忘れられないものとなった。
「まあありがたい話ではあるんだけど、流石に対抗策を考えなきゃね……ユイが助けに来てくれなきゃ本当に危なかったわよ」
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