第五章
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「働いてもらうわよ」
「そうさせてもらいます」
「ええ。けれど出会いはなかったみたいね」
「それはなかったですね」
一人旅の間ずっとだ。
「本当に」
「そうなのね。私もなかったけれど」
課長もというのだ。
「出会いもあるのがね」
「旅行ですね」
「その出会いも楽しみにしていてね」
「そうさせてもらいます」
耳や目に色々な人のことが入って来たけれど正直出会いというものではなかった、それで課長に言われて思ったのでこう答えた。
「次の旅行では」
「次は何処に行くつもりかしら」
「まだ決めてないです」
「じゃあ選んで決めるのも楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
「旅行はその時から旅行だから」
課長は私に笑顔で話してくれた。
「そして終わってからもね」
「それからもですか」
「そうよ。終わってもね」
そうなってからもというのだ。
「旅行よ」
「そうですか」
「そうよ、その時のことを振り返るのもね」
それもというのだ。
「だからね」
「今も旅行してるんですね」
「そうよ。それじゃあ次の旅行もね」
「そうして楽しむといいですね」
「そうよ。だったらね」
「はい、次の旅行もですね」
「楽しんでね。旅行に行こうと思った日がいい日よ」
課長は私にこう言った。
「旅行ははじまるね」
「そうなんですね」
「そして旅立ってね」
「その場所で楽しんで」
「帰ってから思い出を振り返る」
「それも旅行ですね」
「ええ。だからずっと楽しんでね」
私に旅行を勧めてくれたその声で言ってくれた。
「これからも」
「そうさせてもらいます。そしてそこで出会いがあれば」
「それを最高の思い出にしてね」
課長はその経験はないと言った、けれどそれでも私に話してくれた。
「いいわね」
「そうさせてもらいます」
私も笑顔で答えた、そうしてだった。
仕事に戻った、旅行から帰って復帰した仕事は前よりも快適に出来ている感じがした、気分が一新されたせいかそう思えてそのことも嬉しかった。
いい日旅立ち 完
2018・5・30
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