第二章
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「いいから」
「だからですか」
「ええ。他のところ言ってきたら?」
「そうですね。じゃあ行ってみます」
私達の会社は大阪にある、そこからだとだ。
私も課長に答えてそうしてだった、実際に有給を今年分思いきり取ってそのうえで一人旅に出た、そうして行った先は。
北陸だった、実際に八条トラベルは予算も施設もプランも全部凄く勉強してくれて驚く位の格安予算で行くことが出来た。
だが金沢に行くとだった。
金沢は寒かった、それで私は金沢駅からすぐに喫茶店に入ってマスターに言った。
「金沢寒いですよね」
「ここ北陸ですよ」
これがマスターの返事だった。
「ですから」
「寒いんですか」
「はい、お客さん何処から来ました?」
「大阪です」
私は正直に答えた。
「そこからですが」
「ああ、大阪だとね」
「もうずっとですか」
「ここより暖かいからね」
「それを実感しました」
だからね」
「もっとですね」
「厚着の方がいいよ」
その方がというのだ。
「その方がね」
「ちょっと厚着します」
ズボンの下にタイツを履いて上着の下着にもう一枚所謂ババシャツを着てだ、おばさん臭くても背に腹は代えられない。
それで厚着をすると普通になって行き来出来た、それで観て回った金沢は。
お城もお庭も素敵だった、温泉もよくてくつろげた。けれどだった。
私は海の方に行って釣りをしている男の子を見てだ、こんな荒れた波で釣れるのかと思った。それでだった。
男の子に釣れるのかと尋ねた、するとこう言われた。
「あまりね」
「釣れないの」
「やっぱり夏の方が釣れるよ」
この季節の方がというのだ。
「やっぱりね」
「そうよね」
「ただ。釣り好きだから」
だからだというのだ。
「それでなんだ」
「今も釣りをしてるの」
「うん」
じっと海の方を見たまま私に答えてくれた。
「好きだから」
「釣れなくてもいいの」
「うん、それにこの場所は波にも攫われないし」
高い波止場だ、波は荒れているけれどずっと下だ。見れば釣り糸はかなり長い。
「だからいいんだ」
「そうなのね」
「うん、今日も釣れないだろうけれど」
それでもというのだ。
「いいよ」
「釣り自体が楽しみなのね」
「そうなんだ、僕はね」
こう言って釣りを続ける、そうした子とも会って。
それから私はまた街を歩いた、金沢の街は武家屋敷でとても整っていて奇麗に思えた。大阪にないものがそこにあった。
だがここでだ、私はふとこんな話を聞いた。
「最近ここも変わったな」
「そうよね」
「昔の趣がな」
「なくなったわ」
「どうもね」
「何か時代が変わって」
そんな話を聞いた、けれど私にとっては昔ながらの武家屋敷だった。
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