ダン梨・G
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ミノタウロス――またの名をアステリオス。神話では元を辿れば神の血を継いでいる筈の彼がこの世界でただのモンスターでしかないことは、もはや何も語るまい。
真正面、死角なし。ミノタウロスが迷いなくジャンプ切りを選ぶのを見て、俺は奴から見て左に回り込むように回避する。瞬間、俺の行き先を見ていたミノタウロスが体を左に回転させて薙ぎ払いを見せた。右に回避すればもっと回避しやすかった以上、俺の回避は本来悪手。
しかし、そうではない。「ミノタウロスが横薙ぎに斧を振るった」ことこそが重要。
瞬間、俺は地面に深く、深く、尻餅をつきそうなほど深く足を踏ん張り、全身のばねを極限まで弾いて正面より迫る斧に突っ込んだ。
両手に持ったチャクラムを、刹那の間に斧の刃と理想的な直角で接触するよう全力を込める。
ミスれば武器は砕け散り、俺の五体は二つに分断される。だからこそ、必死を過ぎた絶対的な『今』という力をありったけ絞り出す。
「ッオぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
俺の刃と、ミノタウロスの刃。
グガン、と鈍い音を立てて両断されたのは――ミノタウロスの斧だった。
だが、まだだ。俺は全力で踏み抜いた速度のままチャクラムの刃を地面に突き立て、加速した体を独楽のように180度回転させる。そこに待っているのは、全身を使って斧を振り向いたが故に俺に背中を見せるミノタウロスだ。
普通に戦えば斧を躱す関係上生まれ得ないタイミング、距離、隙。
それが、斧を破壊した一瞬だけ息継ぎのように顔を覗かせる。
「背面ッ!!取ったぞッ!!」
全力で再跳躍。両手に持ったチャクラムを振り上げ、跳躍の速度と持てる腕力の残りを全て注ぐようにミノタウロスの背中に突き立てる。チャクラムの切れ味と俺の火事場の馬鹿力が合わさり、30セルチの刃が全て埋まる程に深々と突き刺さった。
「ブギャアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」
それは奴にとって余りにも不意の一撃だったからだろう。どんな生物も不意の痛みには動揺する。一瞬必ず動きが止まるし、本能的に叫んで痛みを和らげようとする。だからこそ――その一瞬の隙に、ベルも全てを注ぎ込む。
「うわぁぁぁぁああああああああああああああああッ!!!」
俺を上回る筋力で強引に体を加速させたベルが、死闘の張り詰めた空気を切り裂いて真正面から接近する。その手に握られているのは――
――『フー・ダルティフィス』の二尺玉だ。
俺の魔法で、俺が起爆させられる。だが作ってすぐなら他人が持つことも出来る。
ベルはそれを躊躇いなくミノタウロスの大きく開いた口に叩きこんだ。ただ詰めただけでは吐きだされるから、シャツにくるんで外に出せないようにしたそれは見事にミノタウロスの
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