巻ノ百三十八 仇となった霧その二
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「そしてじゃ」
「その時にですな」
「真田殿、毛利殿と合流し」
「前にいる敵軍を破っていき」
「果てはですな」
「大御所殿も」
「今ここで破らねばな」
まさにというのだ。
「どうにもならぬわ」
「若し大坂城の南にまで至られると」
「あそこに軍勢が集まり攻められると」
「そうなってしまっては」
「危ういですな」
「大坂城は元より南が問題であった」
後藤もこのことはよくわかっていた、その広く開けている場所には大軍を置き攻めやすいのだ。
「だからな」
「そこに入られる前に」
「ここで、ですな」
「戦の勝敗を決する」
「そうするのですな」
「その通りじゃ、わしも槍を持ってな」
後藤自らというのだ。
「そうしてじゃ」
「戦われますな」
「そうされますな」
「ここは殿も」
「そうされますか」
「そうじゃ、わしも武士じゃ」
だからこそというのだ。
「そうして戦ってじゃ」
「勝つのですな」
「何としても」
「わしの槍は色々言われておるが」
天下一の腕とさえ言われている、だから幸村も清海と共に彼のところに来て清海にその技を学ばせ身に着けさせたのだ。
「その槍もな」
「振るわれ」
「そうされてもですな」
「敵を倒していき」
「大御所殿の御首も」
「わしが取らずともお主達が取れ」
家康、彼の首をというのだ。
「そして手柄にせよ」
「はい、では」
「我等は是非です」
「そうさせて頂きます」
「必ず」
「そうせよ」
こう己の家臣達に言う、そして後藤は彼等にこうも言った。
「褒美は思いのままじゃしな」
「殿もですな」
「この戦に勝てば播磨一国」
「大名に返り咲きですな」
「それも国持大名ですから」
「出世ですな」
「そうしたことはどうでもよい」
国持大名、それも故郷である播磨のそれになるということについてはだ。後藤は平然とした顔で述べた。
「別にな」
「宜しいのですか」
「播磨一国だというのに」
「実質百万石近くですが」
「それだけの国も」
「右大臣様にそこまで買われているのは嬉しい」
そのことはというのだ。
「非常にな、しかしな」
「欲はですか」
「それはおありではないですか」
「特に」
「そうなのですか」
「そうじゃ、そうしたことはな」
特にと言うのだった。
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