第百九話
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「応戦しろ!一歩も通すな!」
深夜のオルコット城に銃声が響きマズルフラッシュが瞬く。
(「ははは!ははははは!》>
銃撃を受けているのは、人型の闇だ。
形は安定せず、燃えているかのように闇が揺らめく。
その闇は幾千発の銃弾をその身に受けながらも堪える事なく歩む。
オルコット城の長い長い廊下を闇が歩く。
闇に銃弾を浴びせるのは、オルコット家の使用人…執事やメイド達だった。
闇がもつ二つの光る珠。
その光は、使用人達に恐怖を与える。
ただ、そこに居るだけで全てを威圧し万物を破壊する、そんな光景を想起させる光。
しかし、それでも、いやだからこそ、当主であるオルコット卿の命令を果たすべく、そして、嘗ての執事長の忘れ形見を守るため、使用人達は銃をとっていた。
それは使用人達の忠誠心がもたらす物であり、オルコット卿と先代執事長の人徳が成せる事だった。
だが、オルコット家の使用人は、結局の所人間でしかないのであった。
【{闇に静め!=v
闇に浮かぶ黄金が、一際輝く。
その光を受けた使用人たちがバタバタと倒れる。
死んでいない事は、上下する胸の動きと呼吸音でわかる。
眠っているだけだ。
だが無力化された事に変わりはない。
「〔なんだあっけない』》
『こいつらただの使用人だししょうがないよ』
(<なら、しょうがないな》]
闇が歩みを進める。
無力化された使用人達を踏まぬよう、気を付けながらだった。
敵対する気がないと言わんばかりの行動だ。
奥へ奥へ。地下へ向かう階段へ。
城の廊下にはカーペットがしかれ、壁には絵画が飾られ、天井には灯りがついていないとはいえシャンデリアが吊られている。
コツコツ…と靴の音がした。
闇の足音ではない。
闇は足音を立てることなく歩く。
コツコツ…
その足音は階上からだ。
闇はいつの間にか、階上へ向かう階段の近くまで来ていた。
そこには左右に向かう廊下、正面にはホール、ホールの扉の横から伸びる階上への階段があった。
そして階段の上の踊り場に、闇の正面に、少女が現れた。
「こんな夜更けにどなたですの?」
少女は金色の長髪で瞳は青…
「{嗚呼…まさか君に会えるとは思っていなかったよセシリア・オルコット)>
「答えなさい。貴方は何者ですか!」
セシリアの問に闇が答える。
「{私は名もない吸血鬼だよ。君たちオルコット家の者に危害を加える気はない。
ただ、私の獲物がこの城に逃げ込んだのだよ)]
「信じるとでも?」
『【信じてもらう他ない。だから…)〉
パァン!という破裂音が響いた。
銃声。
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