ミライトーク『アルサスの平穏』
[4/5]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
とミラ――ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
アルサスから吹く風に乗せて、凱は二人の戦姫に語り掛ける。
エレン「どうした?ガイ」
ミラ「どうしたのかしら?ガイ」
凱「ブリューヌとジスタートでアルサスは奪い合いになったりしないのか?」
国境代わりとなっているヴォージュ山脈の近くにあるアルサスだからこそ、不安なことも多く、そして大きくある。
外交上の戦争であった『ディナントの戦い』とは違い、アルサスは背中に山脈――前面に下り坂の大草原がある為、着陣するには格好の場所だ。わざわざディナント平原まで迂回してガヌロン公爵の領地からブリューヌに入る――という非効率的な方法をとることもあるまい。
逆にブリューヌ側もアルサスを見過ごせない点は、軍略という意味ではそろえられている。
ブリューヌ内乱時、ジスタートの介入を防ぐためにテナルディエ一派がアルサスを焼き払おうとした――という実例が存在する。
仮にテナルディエが手を出さなくとも、ガヌロンが手を出していたかもしれない。そう思うと、アルサスがいかに重要な位置をしめしていたか、はっきりとわかる。
ブリューヌの革命戦争時だってそうだった。
一斉蜂起の時まで身を隠し、機械兵器の燃料を採取できる場所は、ヴォージュ山脈付近に位置するアルサスを除いて、他に臨める場所は存在しない。
もう――あんな戦争は引き起こしてはならない。
そう強く思う故に出た、凱の言葉だった。
エレン「今のところ問題はないはずだ」
ミラ「そうね。今のアルサスはブリューヌとジスタートの共同管理ですもの。どちらかがこの地域に手を出そうものならば、それはすなわち開戦を意味するのよ」
リム「安心してくださいガイさん、少なくとも、我が国ジスタートには戦争の意志はありません」
凱「そうか??それが聞けてちょっと安心したよ」
フィーネ「どうしてガイがそんなことを心配する?」
凱「ティグルの生まれ育った村だからかな」
エレンとミラは目を見開いた。
凱「俺たちがティグルの故郷を心配するのは当然のことだろ?」
ミラ「それもそうね」
凱「ティグルがなんの気掛かりもなく前を向いて走っていける環境を作らないと――アルサスのことで不安になって、頭の中がいっぱいになったらいけないじゃないか」
エレン「??優しいんだな。ガイは」
それは、この場にいないティグルに向けられている言葉とも思えた。
かつて、テナルディエがアルサスを焼き払おうとするのをティグルが知った時、弓一つ、身体一つで立ち向かおうとしたのだ。ライトメリッツの脱走を試みて。
心意気は立派だが、現実は何もできない。私が何を気に入らないのか、そして、どうしてほしいのかを言わせたら、素っ頓狂な返事がティグルの口から出た
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ