黒魔術-Dark Majic- Part1/舞踏会とミスコン
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」
「大丈夫ですわ、先生」
「しっかり聞いてますので、ご心配なく」
生物の授業担当である春野ムサシに対して、ルイズとキュルケはそれぞれそのように告げて話を終わらせた。
(本当に大丈夫なのかよ…)
ミスコン前に堪忍袋が切れて乱闘騒ぎでも起こさないか、授業中のサイトはちょっと気が気でなかった。
休み時間中、ティファニアも窓の外を見て考え込んでいた。
サイトがそうであるように、彼女もまた先日の巨人と怪物の戦いの光景が、頭の中で何度も記録ビデオのように再生され続けている。
非現実的で恐ろしいひと時であった。自分もそうだが、子供たちが危うくあの怪物たちに殺されるところであった。しかし間一髪、二人の巨人たちのおかげで事なきを得た。これで一安心…のはずだったが、今度は違う意味で胸の奥で何かが…テファの中に奇妙な感覚が残っていた。
それは、ウルトラマンや怪獣、彼らの戦いに対する…既視感であった。
(どうしてかな…前にもあんなこと、経験したことがあったような……それに…あの巨人…)
何の根拠もないのに、なぜかあのウルトラマンが『誰』なのか、誰と重なったのかをテファは理解していた。初めて見るはずなのに、そもそも『彼』と出会ったのも、ごく最近になってからのはずなのに。
しかもその事を考えると、妙に胸がざわついて、不安がドっと押し寄せる。
(…うぅん、そんなはず、ないよね…きっと夢を見てたのかも)
そうだ、そもそも昨日のことは、夢に違いない。だって、あれだけの大事件がニュースにも新聞にも、それどころかSNSにも全く取り沙汰されていないのだから。当然、同居中の姉と慕う女性は、もしあれだけのぶっとんだスケールの事件が現実に起きているとしたら間違いなく話に上げてくるはずなのに、あの出来事を全く話題に上げてこない。同じく、巻き込まれていたはずの子供たちですら、トラウマを発症したりもせず、何事もなくいつも通りだ。実際に戦いの場となったあの公園も、何事もなかったように元通りだ。
夢が妙にリアルで生々しかったせいで、現実と夢の区別が付けづらかったのだろう。
そんな風に折り合いを付けているテファは、知るよしもなかった。
ウルトラマンと怪獣のことなど存在せず、この世界は争いのない平和で満たされている。そんな仮初めの平穏を維持するため、アンリエッタたちナイトレイダーの情報操作の影響下にあったなどと。
気が付くと、授業終了のチャイムが鳴り終わっていた。先生に当てられなかったのは幸運だが、これで学業が厳かになってしまう。
ため息ばかりが出る中、彼女は自分に近づく人の気配を感じる。視線を向けると、数人ほどの男子生徒たちが彼女の前に立っていた。
「あ、あの…何か御用ですか?」
「ティファニアさん、お願いがあります」
「え?あ、あの…なんでしょうか?」
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