巻ノ百三十七 若武者の生き様その十
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「そうするか」
「そのつもりです」
大助の返事は明快なものだった、これ以上はないまでに。
「ですからお願いしています」
「そうか、ではな」
「はい、それでは」
「お主も共にな」
「最後の最後まで戦いまする」
「拙者はやはり果報者じゃ」
このことを心から感じて言う幸村だった。
「お主達十一人がいる、だからな」
「それで、ですか」
「家臣であり友であり義兄弟である者達が十人いてじゃ」
十勇士、まずは彼等だった。
「そしてこれ以上はない子もおる、それでどうしてこれ以上の宝があろう」
「そう言って頂けるとは」
「我等も果報者でござる」
「殿と出会うことが出来てこれまで共にいました」
「何があろうと離れることはありませんでした」
「そして今に至る」
「何と幸せなことか」
「そうじゃな、我等程幸せな者達はおらん」
幸村ははっきりと言い切った。
「だからじゃ」
「信濃一国もですか」
「必要ない」
「そう言われますか」
「一国の主にと言われましても」
「そういうことじゃ、拙者は国も宝も欲しくなくてな」
既に宝を持っていてだ。
「その為に戦ってもおらぬしな」
「武士の道ですな」
「その為に戦っているからですな」
「そのこともあり」
「国も宝もよいのですな」
「拙者は武士の道を歩む」
今もこれからもというのだ。
「そうする、だからな」
「では」
「これからですな」
「その武士の道を進み」
「大御所殿を」
「御首を頂こうぞ」
幸村の言葉は強かった、そうしてだった。
幸村は木村の死を知ったうえでその悲しみを胸に収めたうえで兵を進ませた、全てはこの戦に勝つ為に。
巻ノ百三十七 完
2018・1・1
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