巻ノ百三十七 若武者の生き様その八
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「この度のことは」
「見事な武勲じゃ、褒美をやろう」
「有り難きお言葉」
「そしてこれだけの者を討ち取れたこと誇りに思うのじゃ」
庵原に暖かい目で言うのだった。
「よいな」
「わかり申した」
「末代までのな」
その誇りはというのだ。
「まさにな」
「そうさせて頂きます」
「この首は丁重に弔え」
木村についてはこう述べた。
「よいな、この者は死んだが武名を残した」
「だからこそですな」
「丁重に弔ってやれ」
家康の目には涙があった、そのうえで木村の首を見た後彼を丁重に弔わさせた。そうして幕府の本軍をさらに進めさせた。
木村のことはすぐに忍達が幸村に伝えた、幸村はそのことを聞いて目を強く閉じた、そうして再び目を開いて言った。
「あの若さでか」
「はい、お見事でした」
「そうであったか、木村殿は名を残されたわ」
木村のことを想っての言葉だった。
「ご自身が望まれた様にな」
「では」
「大御所殿の首は取れなかったが」
彼の望みは果たせなかった、しかしというのだ。
「冥土においてもな」
「このことはですな」
「充分に誇れる」
そうだというのだ。
「まさにな」
「左様ですな」
「うむ、それではな」
「我等もですな」
「早く後藤殿、毛利殿の軍勢と合流してな」
今それを目指して兵を進めているのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「我等が木村殿の望みを果たす」
散華した彼に代わって、というのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「そうじゃ」
まさにと言うのだった。
「ここはな」
「一気に攻めまするな」
「いよいよ」
「そして大御所殿の首を取り」
「戦を一気に終わらせる」
「そうしますな」
十勇士達も家康に聞いてきた。
「では我等も」
「この腕と術を振るいます」
「そして必ずです」
「大御所殿の首を取りましょうぞ」
「そうするぞ、他の首はいらぬ」
家康以外の首はというのだ。
「他はうち捨てよ、あくまでな」
「狙うのは大御所殿だけ」
「他の者は討ってもですな」
「その数には入れるな」
「そうせよというのですな」
「そうじゃ、大御所殿の首を取れば勝ちじゃ」
まさにその時点でというのだ。
「だからじゃ」
「ここは、ですな」
「他の者は討ち取ってもどうでもいい」
「そういうことですな」
「他の者をどれだけ討とうが大御所殿が健在ならばじゃ」
それでというのだ。
「それでじゃ」
「他の者の首はですな」
「あえて捨てておき」
「そして大御所殿の首だけを取る」
「それに徹しますか」
「そうじゃ、それと言っておくが」
幸村は十勇士達にさらに言った、そこには大助もいる。
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