【最果ての夢】
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、私を呼んでくれないのか?」
そこでふと、父ヒザシは若干顔を曇らせる。
「え…、父上では、不満なのか?」
「いや、不満というか、堅苦しいというかな……。せめて日向当主としてのお前ではなく、父子二人の時くらいは父様と……いや、父さんでもいいんだぞ?」
「父上、いつまでも俺を子供扱いしようったってそうはいきませんよ。もう少し俺の父として威厳を持って下さい」
俺は父の広い額をペシッと軽く片手で叩いた。
「むぅ、意地悪な息子だな……一体誰に似たんだ」
不満げに片手で自分の額をさすりながら述べた父の一言に俺は「あなたに似たんですよ」と言おうとしたがやめておいた。
……大体父上は隙あらば、人目があろうと俺の頭を撫でてこようとする。
未だに息子の俺に世話を焼きたがって、どこへ行くにも付いて来ようとする。
正直日向当主としての俺の立場からして迷惑なんだが……嬉しそうな父を見ると、あまり強くも言えなくなる。
若くして日向当主となった俺の事を誰よりも喜んでくれているのは他でもない、父ヒザシなのだから──
「そうだネジ……、そろそろあの子を放してあげられるんじゃないだろうか」
「あの子……?」
「まさか最近忙しくて忘れたんじゃないだろうな……。ほら、前に怪我をして飛べなくなっていた小鳥を保護したじゃないか」
そう、だったか……?
よく覚えていないが、父がそう言うならそうなのだろう。
「その子は今、どこに──」
「日向当主として忙しいお前の代わりに、私が世話をしていたからな……。付いておいで、あの子のいる部屋はこっちだ」
父に言われるままその部屋を訪れると、吊るされた籠の中に、一羽の蒼い小鳥が──
ピィピィ鳴きながら、狭い籠の中をバタバタと飛び回り、時折蒼い羽根がひらりと落ちる。
「随分元気になっただろう、あんなに衰弱していたのに……」
「───。父様、早く……早くこの子を、籠の中から解き放ってあげないと」
籠の中の鳥を見て、俺は何故かとても胸が締め付けられる思いがした。
「そうだな……、じゃあ鳥籠を持って外へ出よう」
二人で日向家の庭先へ出て、父ヒザシの持った鳥籠の出入口の鍵の掛かった扉を俺がそっと開けると、蒼い小鳥は一度動きを止めて籠の中から俺をじっと見つめ、一瞬の間の後勢いよく籠から蒼空へ飛び立って行った。
「元気でな、ぴぃちゃん!」
ぴ、ぴぃちゃん……? 蒼い小鳥に名残惜しそうに呼び掛けた父様に俺はつい吹き出しかけたと同時に、現実に引き戻された。
いや、違う……。“ここ”こそが、現実ではないと、あの小鳥が教えてくれた気がする。
「どうした、ネジ。あの子は再び自
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