第5章:幽世と魔導師
第159話「追い込まれる」
[1/10]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
=椿side=
悪路王が京都に向かったのを見送り、改めて私たちは優輝を起こしに向かう。
まだ優輝を守っていた結界は健在で、他の妖に襲われる事もなかった。
「………」
だけど、その途中で私は足を止める事になる。
「……かやちゃん」
「ええ。……まだ、終わらないみたいね」
振り返る。
そこには、薔薇姫が持っていた瘴気が、そのまま残っていた。
「……なるほどね。あの薔薇姫は、他の守護者や妖と違って、幽世の門を基点としていない。だから、ただ倒しただけだと……」
「瘴気が、残るって訳だね……」
“薔薇姫”という器は、既に葵に還元された。
でも、その器を動かしていた瘴気はそのまま残っていた。
私の術で多少は削れていたけど、ほとんどそのままだった。
「……葵、転移魔法で優輝を連れて逃げられる?」
「安全第一って訳だね。……でもごめん。既に瘴気に妨害されているし、式姫の力が戻ったばかりなのか、魔法そのものが安定しないんだ」
「そう……」
出来れば優輝だけでもアースラか、そうでなくとも安全地帯に連れて行きたかったけど、それができないのなら仕方ない。
「守り抜くわよ」
「……了解……!」
葵がそう答えるとほぼ同時に、瘴気は辺り一帯を覆うように広がる。
そして、現れるのは……。
「……質より量、って所かしら?」
「守りの戦いだと、確かにそっちのが有効だけど、やられる身からすれば厄介すぎるね……」
瘴気から生まれる大量の妖。
現在進行形で生れ落ちているからか、今は数が少ない。
でも、すぐに処理が追いつかなくなるかもしれない。
「……やるしか、ないわね」
「……そうだね」
霊力を矢の形にし、同じく弓の形にした霊力に番える。
妖の出現は瘴気がある限り続くだろう。だから、瘴気を消せば終わるだろうけど……。
この出現頻度だと、倒すのだけで精一杯だろう。
「(……早く目を覚まして、優輝……!)」
新たな力を得ても拭えない疲労を感じながら、私達は再び戦いに身を投じた。
=司side=
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
ズゥウウン……
山に巻きつけそうな程の巨体が、地面に沈む。
全力で押し切ったものの、ようやく倒せた……。
「……結界で隔離して、正解だった……」
結界内は、完全に荒れ果てていた。
建物は灰塵、または瓦礫と化し、まさに終末を連想するような風景になっていた。
「あん
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ