第六章
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「あんたひょっとして」
「うん、実は難波で落雷があったよね」
「それを見てなのね」
「閃いたんだ、あの中に生きものが見えて」
「雷の中の生きものって」
その話を聞いてだ、杏はすぐにだった。
佳乃を呼んで二人で隼一郎に尋ねた。
「それって雷獣じゃないの?」
「私もそのお話を聞いたけれど」
佳乃も隼一郎に言ってきた。
「多分ね」
「先輩もそう思われますね」
「ええ、六本足で雷の中にいる生きものって」
「この学校にもいるっていう」
それで二人も知っているのだ、この学園は怪談話が非常に多くそれでこの雷獣もいると言われているのだ。
「雷の中にいる妖怪じゃない」
「その雷獣を見たのね」
「あっ、そういえば雷獣だね」
隼一郎も二人に言われて気付いた。
「あの生きものは」
「妖怪じゃない」
佳乃は隼一郎に怪訝な顔で問うた。
「それは」
「確かに。言われてみれば」
「その雷獣にネタを貰ったの」
「はい、あの落雷の時に」
「それで書けたのね」
「そうなんです」
「凄いお話ね。ただね」
佳乃はここで怪訝な顔を笑みにさせて隼一郎にこうも言った。
「小説書けたのはよかった」
「こっちもよ」
脚本の方の杏も笑顔で言ってきた。
「お陰で舞台出来るし」
「会誌も完成したし」
「雷獣に助けてもらったわね」
「あの雷にね」
「いや、本当に」
隼一郎も頷いて言う。
「今回は妖怪に助けてもらったよ。ネタは何時何処でどうして出て来るか」
「貰うにしてもね」
「わからないものね」
「全く以てね」
こう二人に返した、隼一郎は二つの作品を書き上げてからこのことをしみじみとして思うのだった。そしてもう二度とネタに困りたくはないとも思ったがこればかりはどうにもならないともわかっていた。その時によって突如としてそうなることも今回のことでわかったので。
雷獣 完
2018・5・24
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