第四章
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「織田作之助さんに縁のある場所が今も多いですね」
「そうでしょ、カレー屋さんとか鰻屋さんとかね」
「それで法善寺横丁とか」
「あそこのお店もね」
それぞれ自由軒、いづも屋、夫婦善哉である。
「行ってね」
「そうしてネタ探しですね」
「そうしない?」
こう隼一郎に言うのだった。
「今からね」
「そうですね、時間もありますし」
「それなら」
隼一郎だけでなく杏も頷いた、そしてだった。
三人は地下鉄でまずは梅田まで行ってそこから兵庫に戻るつもりだったがその前に難波に寄ることにした、だが。
地下鉄から高島屋の前から難波の街に出ると天気はかなり悪くなっていた、それで杏は土砂降りで空もゴロゴロ鳴っている難波の街を見て隼一郎と佳乃に言った。
「これはですね」
「うん、一旦地下に戻って」
「そこからアーケードに行きましょう」
二人はこう杏に答えた。
「私達傘は持っていないから」
「その方がいいよ」
「難波が地下も充実していて何よりだったわ」
杏はこのことが不幸中の幸いいや雨を避けられてよかったと思ってそうしてだった、三人で一旦地下街に戻ろうとしたが。
空から雷が落ちた、何と雷は三人の目の前にあるバス停のところに落ちたが。
幸い避雷針があり誰にも落ちなかった、しかしそれを見た者は仰天した。それは隼一郎も同じであったが。
彼は見た、確かにその雷の中に。
黒い六本足の獣がいた、その獣は鼬を思わせる外見だったが。
明らかに鼬ではないその獣を見た、その瞬間にだった。
獣と目が合ってだ、獣に心の中で問われた。
「自分困ってるやろ」
「あれっ、わかるんだ」
「わかるわ、顔を見たらな」
それでというのだ。
「もう困り果ててるな」
「実は部活の小説と脚本で」
「成程な。西鶴さんや織田作さんもそういう時あったわ」
「井原西鶴さんや織田作之助さんも」
「そや、あの人等もネタに困ってた時があった」
創作においてというのだ。
「そうなってたわ」
「そうだったんだ、あの人達も」
「多作で速筆な人でもそうした時がある」
織田作之助hは多作速筆だった、若くして結核で世を去っているがその作品の数は早世の割には多い。
「自分はそうした時のその人達とや」
「同じ顔になっているんだ」
「そや」
その通りだというのだ。
「そうした顔になってるわ」
「実際ネタが出なくて困ってるよ」
「ほなこの雷のことを書けばええ」
「雷?」
「雷の話なら幾らでもあるやろ」
それこそというのだ。
「そやろ」
「そういえば」
獣に言われてだ、隼一郎も心の中ではっとなった。
「立花道雪さんの話もあれば歌舞伎の鳴神でも」
「そういうのがあるやろ」
「そうした作品を小説にしたり脚本にすれば
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