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外伝・少年少女の戦極時代
斬月編・バロン編リメイク
割れた林檎と隠された王子
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ないけど、戦うのはふつうにできるようになったし、ダンスのキレももどってきてる感じ」
「じゃあ問題ないか」
「ない、ない」





 碧沙は今日のフリーステージに程近い商店街で買い物をして、ステージに向かっていた。

 その途中、路地の人込みで誰かとぶつかった。
 碧沙は急いで謝ってからその人物を見やった。

「駆紋さん」
「お前か」
「はい。ちゃんと『わたし』のほうですよ」

 戒斗は特にコメントせずに過ぎ去ろうとした。その前にふと碧沙は彼が漂わせた香りに気づいた。

「駆紋さんもお墓参りに行って来たんですか?」

 ぴたり、と戒斗は足を止めた。

「す、すみませんっ。その、ユリの残り香がしたので、つい」
「――両親の墓参りだ」
「ぁ……おくやみ、申し上げます」
「別に。ところでお前のほうは、その大荷物は何だ?」

 戒斗は碧沙が背負った満杯のエコリュックを見やった。

「あ、これですか? 実は明日、両親のお墓参りに行こうって話になったんです。兄さんたちは忙しいから、わたしが買い物してきますって。掃除道具とかゴミ袋とか、あとお線香とロウソクとマッチと」
「供花はいいのか」
「今日買ったらしおれちゃうんで、明日、現地調達です」
「そうか」

 戒斗はそれにて碧沙との会話を打ち切り、去ろうとした。

「恨んでいますか? ユグドラシルを――わたしたちを」

 それはカーディーラーに逃げ込んだあの夜、やるせなさから口を突いた言葉。

「そんな余分な感情、とうの昔に捨てた」

 今度こそ戒斗は雑踏の中に紛れて見えなくなった。

(会ったこともないお母さん。裏で朱月さんみたいな人たちにヒドイことしてたお父さん。それでも、わたしたち兄妹を産んでくれたのは本当だから。そのことだけは、きちんと感謝しよう)

 碧沙もまた買い物は終えていたので、チームメイトたちが待つステージへ向けて歩き出した。



 【鎧武外伝 斬月編&バロン編リメイク -完-】
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