斬月編・バロン編リメイク
割れた林檎と隠された王子
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初
ないけど、戦うのはふつうにできるようになったし、ダンスのキレももどってきてる感じ」
「じゃあ問題ないか」
「ない、ない」
碧沙は今日のフリーステージに程近い商店街で買い物をして、ステージに向かっていた。
その途中、路地の人込みで誰かとぶつかった。
碧沙は急いで謝ってからその人物を見やった。
「駆紋さん」
「お前か」
「はい。ちゃんと『わたし』のほうですよ」
戒斗は特にコメントせずに過ぎ去ろうとした。その前にふと碧沙は彼が漂わせた香りに気づいた。
「駆紋さんもお墓参りに行って来たんですか?」
ぴたり、と戒斗は足を止めた。
「す、すみませんっ。その、ユリの残り香がしたので、つい」
「――両親の墓参りだ」
「ぁ……おくやみ、申し上げます」
「別に。ところでお前のほうは、その大荷物は何だ?」
戒斗は碧沙が背負った満杯のエコリュックを見やった。
「あ、これですか? 実は明日、両親のお墓参りに行こうって話になったんです。兄さんたちは忙しいから、わたしが買い物してきますって。掃除道具とかゴミ袋とか、あとお線香とロウソクとマッチと」
「供花はいいのか」
「今日買ったらしおれちゃうんで、明日、現地調達です」
「そうか」
戒斗はそれにて碧沙との会話を打ち切り、去ろうとした。
「恨んでいますか? ユグドラシルを――わたしたちを」
それはカーディーラーに逃げ込んだあの夜、やるせなさから口を突いた言葉。
「そんな余分な感情、とうの昔に捨てた」
今度こそ戒斗は雑踏の中に紛れて見えなくなった。
(会ったこともないお母さん。裏で朱月さんみたいな人たちにヒドイことしてたお父さん。それでも、わたしたち兄妹を産んでくれたのは本当だから。そのことだけは、きちんと感謝しよう)
碧沙もまた買い物は終えていたので、チームメイトたちが待つステージへ向けて歩き出した。
【鎧武外伝 斬月編&バロン編リメイク -完-】
[8]前話 [9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ