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25部分:エリザベートの記憶その三

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エリザベートの記憶その三

 それから書斎に入った。そしてそこで仕事に入った。まだやるべきことが残っていたのである。
「旦那様」
 そんな彼のところにあの執事が入って来た。
「何かわかったか」
「少し動きがありました」
「動き」
「はい。ニュルンベルクですが」
「ニュルンベルク」
 それを聞いた彼の目の動きが止まった。
「通信が途絶してそれからかなり経ちます」
「確かあそこに派遣されている執政官はヴァルター=フォン=シュトルツィングだったな」
「はい」
「あの男は切れ者だという。やはり何か考えあってのことか」
「帝国の侵略を防ぐ為かと」
「帝国か」
「このチューリンゲンに来るのも時間の問題だと思われますが」
「それはわかっている」
 彼は執事に対してこう答えた。
「軍備は整えてある。最新鋭の戦艦も用意してるしな」
「ローマでございますか」
「そうだ。あれは生体コンピューターを搭載していたな」
「はい」
「今までの艦とはまるで違う。銀河で七隻しかないそうだが」
「それがある限り大丈夫でしょうか」
「いや、それでも油断は禁物だ」
 タンホイザーは一隻の戦艦で安穏とするような男ではなかった。それだけで戦局が決定するものではないことをよくわかっていたからだ。
「まだ手は打っておかなければならん。ニュルンベルクの他にも拠点を設けておきたい」
「ここの他にも」
「若しもの時の為だ」
 彼は言った。
「チューリンゲンに何かあろうとも彼等と戦えるようにな。よいな」
「わかりました。では調べておきます」
「うむ、頼む。そしてだ」
「はい」
 彼はまた問うてきた。
「他に何か変わったことはないか」
「そうですね」
 執事は一呼吸置いてから述べた。
「ローエングリン=フォン=ブラバントの軍がクンドリーという女を追っているそうです」
「クンドリー!?誰だ、それは」
「何者かわかりませんが。その追撃隊にあのジークムント=フォン=ヴェルズングが参加しているとのことです」
「あのエースパイロットがか」
「はい。どうやら追撃にかなり力を入れているようですが」
「ふむ」
 彼はそれを聞いて思索に入った。
「あの女に何かがあるということか」
「そこまではまだ詳しいことはわかりませんが」
 彼は述べた。
「ですがヴェルズング大佐まで投入しているということはやはり重要なものがあると思います」
「わかった。ではそちらの調査も続けてくれ」
「はっ」
「そして各方面にも情報収集を怠らないでくれ。いいな」
「わかりました。それでは」
「うむ」
 執事は下がった。一人になったタンホイザーは書斎で送られてきた書類に目を通しはじめた。そしてそこからも多くのことを知った。

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