第三章
[8]前話
その祈にだ、ある日神社の若い神職の青年が尋ねた。
「何だかんだで管長さんはお嫌いではないですね?」
「うむ、わかるか」
祈は神主の言葉に笑顔で応えた、丁度神社の掃除が終わって一息ついて茶を飲みながら話していたところだ。
「管長さんは確かに厳しいがのう」
「それでもですね」
「わらわは嫌いではないのじゃ」
祈は青年に笑顔のまま話した。
「まことにのう」
「傍から見ていてそう感じましたが」
「実際にそうなのじゃ」
「やはりそうですね」
「しかしじゃ」
ここでこうも言った祈だった。
「わらわは管長さんは好きじゃ。神主さんも貴殿もな」
「しかしですね」
「わかるのう。やはり」
「住職さんは」
「好きになれん。人によってころころ態度を変える」
この寺の住職、管長の下にいるこの僧侶はそうしたところがあった。学識と信仰はあるが実は妻帯しつつも美男子や美少年には目がないのだ。とはいっても僧侶の世界では男色は昔は普通のことでしかも妻以外の女性には手を出さない。
しかしその美形と見ると鼻の下を伸ばすのを見ていてだ、祈は言うのだ。
「煩悩全開でのう」
「だからですね」
「うむ、あの人は好きではない」
「住職さんよりもですね」
「やはりな」
「管長さんですか」
「そうじゃ」
この寺の最高責任者であり寺のことも神社のことも統括している彼だというのだ。
「わらわはこの寺では一番尊敬しておる人はな」
「管長さんですね」
「何度も何度も怒られておるが」
「その怒らないこともですね」
「わららへの愛情とそして見捨てない確かなお心じゃからな」
それがはっきりわかるからなのだ、祈にしても。
「尊敬しておる」
「そういうことですね」
「これでも人は見ているつもりじゃ。では休憩の後で」
「はい、今度はお寺に行って」
「あちらの手伝いをしようぞ」
祈は青年に笑顔で応えた、そうして今度は寺で働くが。
管長はその彼女を厳めしい顔であったが暖かい目で見ていた。それは親に捨てられた彼女にとってはまさに親の目であった。それだけに有り難いものであった。
寺巫女 完
2018・5・21
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