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ドリトル先生と和歌山の海と山
第八幕その十一

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「ちょっとだけでもね」
「先生が恋愛を知っていればね」
「高野山はそうした場所じゃなくても」
「気付いてくれたら」
「私達も一安心なのに」
「全くね」
「いやいや、本当に僕はだよ」
 それこそというのです。
「もてたことは人生で一度もないから」
「一度もなの」
「学生時代から?」
「そして子供の頃からも」
「ないの」
「ないよ、本当に」
 それこそ一度もという返事でした。
「これがね、僕に女の人はね」
「全く縁がない」
「もう他の何よりも」
「そう言い切るのね」
「気付かないまま」
「いやいや、自分のことだからわかってるよ」
 本当にご自身ではこう思っています。
「この外見でスポーツは全然駄目でね」
「やれやれね」
「これじゃあ進展が全くないのも仕方ないわ」
「先生が気付くのは何時か」
「もうここに信長さんのお墓があるのと同じ位の謎ね」
 それこそと言う動物の皆でした。
「わからないね」
「先生が気付かないのは」
「全く以てね」
「確かに器用な人じゃないけれど」
「家事は全然出来ないし」
 本当にこうしたことは出来ないです。
「器用さとも無縁だけれど」
「さっきお話に出なかったけれどね」
「いや、こうしたことに気付かないって」
「やっぱりね」
「問題あるわ」
「先生もっと見たら?」
「絶対傍にあるよ」
 先生の、というのです。
「もうすぐそこに」
「少し立ち止まって周りを見たら気付くよ」
「僕達も言ってるし」
「いつもね」
「だから僕は女の人にはもてないんだよ」
 先生の言うことは変わりません。
「サラは結婚したらって言うけれどね」
「このまま?」
「このまま結婚しないで」
「僕達と一緒にいるの」
「トミーや王子とも」
「皆には悪いけれどそうなるかな」
 独身のままだというのです。
「僕はね」
「まあ僕達はずっといるけれどね」
「先生と一緒にね」
「イギリスにいた時からそうだったし」
「これからもだけれどね」
「けれど先生のそうした考えは」
 動物の皆にしてみればです。
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