第三章
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「これからだからな」
「客が来るのはか」
「この店結構人が多いんだよ」
「それでか」
「うちの店人手を探してるんだよ」
こうクルーエルに言うのだった。
「それも住み込みでな」
「住み込みか」
「どうだい?あんた」
マスターは笑って言ってきた。
「これからな」
「この店で働け、か」
「ああ、どうだい?」
こう彼に誘いをかけるのだった。
「よかったらな」
「俺でいいのか」
クルーエルはマスターに顔を向けて問うた。
「俺は接客に向かないと思うが」
「不愛想だからか」
「そうだ」
それ故にというのだ。
「俺はかなりな」
「だからかい」
「そんな俺を雇うのか」
「今店は俺一人でやっててな」
「客も多いからか」
「ああ、それでだよ。しかも用心棒も欲しいしな」
このこともあってというのだ。
「あんたならな」
「用心棒にもなるか」
「ああ、仕事は全部何度でも何度でも教えるからな」
そうするからだというのだ。
「用心棒も兼ねてな」
「そうしてか」
「働いてくれるかい?」
こう彼に言うのだった。
「これからな」
「そうしていいのか」
「いいさ、いいって言ったら雇うぜ」
まさに今の瞬間にとだ、マスターはクルーエルに笑って答えた。
「その瞬間に」
「何をしていいのか一切わからない」
まずはこう返したクルーエルだった。
「だったらな」
「いいんだな」
「雇ってくれ、俺を」
「それじゃあな」
こうしてだった、クルーエルはこの日からこのバーに雇われた。このことが決まってそれからだった。
彼は実際に住み込みで働きはじめた、最初は何をしていいのか全く知らず失敗ばかりだったがマスターはその彼に親切に同じことを何回も何十回も教えてくれてだ。
数ヶ月経った頃には彼は立派なバーの店員になっていた、その彼にマスターは今度はカクテルを教えていったが。
その彼にだ、客達は言ってきた。
「あんたいいねえ」
「ガタイいいから用心棒にもなってるしな」
「しかも仕事はテキパキしているし」
「いい店員さんだよ」
「俺がか」
クルーエルはその彼等に応えた。
「いい店員か」
「ああ、不愛想だけれどな」
「そこがどうにもだけれどな」
「いい店員さんだぜ」
「サービスはいいしな」
「仕事も出来てるしな」
「そうか、俺は店員か」
これまで復讐のことしか考えていなかった、だが気付けばだ。
今の彼は店のことを第一に考えていてそれにだった。
日々の暮らしのことも考える様になっていた、三度の食事や風呂に入ることも。それで言うのだった。
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