第一章
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仕事
あと一人だった、自分を実験台にした者達の残りは。
クルーエルはその状況になりながらも国から国街から街を徘徊していた、その中で彼はふとあるバーに入った。
何故入ったかというと酒を飲みたくなったからだ、だから目に入ったそのバーに入った。それだけだったが。
その彼にだ、バーのマスターは彼にウイスキーを出してから聞いてきた。
「あんた何してるんだい?」
「何とは何だ」
「だから仕事だよ」
初老の粋な外見の男だった、白い髪の毛をオールバックにしていて白いブラウスと黒の蝶ネクタイにベスト、ズボンがよく似合っている。
その彼がカウンターの席に座るクルーエルに聞いてきたのだ。
「何の仕事をしているんだよ」
「ない」
クルーエルはロックのウイスキーを飲みつつ答えた。
「ついでに言うと家もない」
「ホームレスかい」
「そうなる、俺は仕事も家もなければだ」
その岩の様に表情のない顔で言うのだった。
「記憶もない」
「本当に何もないのかい?」
「あるのは憎しみだけだ」
「金はあるよな」
「それはある」
自分を実験台にしてきた者達の金を生きる為にそして強盗殺人犯の仕業と警察に思わせる為に奪ってきた、現金だけでなくカードも。カードの利用の仕方は頭に入っていたのでそれで金を引き出すことは出来た。
自分を実験台にしてきた連中は全員かなりの金を持っていた、それで彼の口座にはもう普通の人間なら一生豪遊しても足りないだけの額の金がある。
だがそれでもだ、彼にあるものは。
「憎しみしかない」
「それはまた随分寂しいな」
「そしてだ」
クルーエルはマスターに飲みつつ答えた。
「俺はこれからのこともだ」
「何も考えていないのかい」
「一切な、あと一人でだ」
まさにだ、次に殺す者でというのだ。
「全て終わる」
「終わってからはか」
「何をしていいのか」
「わからないのか」
「そうだ、何もな」
「そうか、金はあってもか」
「俺には何もない」
それこそ憎しみ以外はというのだ。
「本当にな」
「そうかい。だったら」
「何だ」
「あんた警察に追われてるかい?」
「見つかる様なことはしていない」
しくじってきていない、証拠も一切残していない。復讐は果たしてきたが彼が一連の復讐を殺人事件として捜査している警察の捜査線上に上がったことは一度もない。
彼は社会的には一介のホームレスだ、それでマスターにもこう言ったのだ。
「何もな」
「引っ掛かる言い方だな。しかしな」
「しかし。何だ」
「あんたその一人とかが終わったらな」
その時はとだ、マスターは彼に言ってきた。
「またここに来るかい?」
「この店にか」
「ああ、店の名前と場所は覚えたか」
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