暁 〜小説投稿サイト〜
リング
212部分:ラグナロクの光輝その六十六

[8]前話 [2]次話

ラグナロクの光輝その六十六

「卿か」
「ああ、話したいことがあってな」
「卿とは。色々とあったな」
「そうだな、誤解も多かったが」
 二人の邂逅は深いものであった。それまでの戦いにおいてタンホイザーは彼を狙ったこともあった。ニーベルングと対峙し、ヴェーヌスを失った時には共に戦っていた。そしてここを目指す時にも共に進んだ。深い付き合いと言えるものになっていたのである。
「だが今は違う」
「そうだな」
 それを確かめ合い頷き合った。
「そしてだ」
 ジークフリートはそのうえで述べた。
「卿の奥方のことだが」
「ヴェーヌスか」
「いや、夢に出て来たというもう一人の存在」
「エリザベートか」
「ここにいると思うか」
「おそらくはな」
 タンホイザーは答えた。
「このヴァルハラ、ラインにいると思う」
「そうか」
「おそらくここでニーベルングは倒れはしない」
「ラインで」
「そうだ、その時にな」
「全てが終わるか」
 こう呟いた。
「それからだろう、卿の夢のことがわかるのも」
「ヴァルハラの玉座」
「夢のことは、ラインでわかる」
「私も卿もか」
「そしてそこで」
「クリングゾル=フォン=ニーベルングもまた」
「滅びることになるだろうな」
 タンホイザーの声は強いものになっていた。
「その最後を掴む為にも」
「この戦いには勝たなければならない」
「しかしだ」
「何だ?」
 ジークフリートはタンホイザーの声の色が変わったのに目を動かしてきた。
「クリングゾル=フォン=ニーベルング、謎の多い男だ」
「まだ謎があるというのか」
「エリザベートのことがな」
「彼女のことが」
「まだ何かあるかも知れない」
 そのうえで述べた。
「あの男の謎は」
「それが最後の最後でわかるか」
「そうであって欲しいが」
 だがまだ全てはわからない。それはこの戦いの果てにあるのであろうか。それすらも彼等にはわかりかねていたのであった。戦いはまだ続いていた。
「九機のワルキューレは上手く動いてくれていますね」
「はい」
 パルジファルの言葉に部下達が応える。
「そして我等も」
「このままいけばここでの勝利は確実です」
「ラグナロクに」
「いえ、それでもラグナロクはまだ続きます」
 パルジファルの言葉にすぐに問いが返る。
「といいますと」
「艦隊を退けてもまだラインがあります」
「そこへ乗り込んで、ですか」
「はい」
 パルジファルは頷いた。
「まずはノルンへ集結して」
「然る後に」
「ラインへ、そして最後の戦いに」
「わかりました、では」
 この戦いに勝ち。彼等は意を決した。そして今目の前にいる敵に向かうのであった。

[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ