第24話『暁のティッタ〜勇者が示すライトノベル』
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なずにすんだはずだ。
既に過ぎ去りし過去を考えていても、戻りはしない。
そんなことは――わかっている。
それでも、皆は抱かずにはいられない。
ガイの姿を見るたびに、助けることができた――ありえたかもしれない『IF』の展開がどうしても頭をよぎる。
無論、彼らアルサスの民はガイのこれまでの経緯を知らない。
確かに、彼らの語ることはわかる。そこに悪意は存在しないことも。
ガヌロンの異端審問からの帰還――オステローデでのヴァレンティナとの邂逅――ディナントの戦いへ駆けつけた一連の流れを、彼らは『知らない』のだ。※3
しかし、人々が受けいれられない場合は往々にして存在する。
例え凱のいきさつを民に全て語って知らせたとしても、それが真実であったとしても、自分たちには都合が悪かったり、寝耳に水の内容だったり、別勢力の圧力が働いたりする場合だ。
――受け入れられない真実は、あってはならない――
それが、アルサスの民の総意なのだという。
村人の心の平穏を考えるなら、獅子王凱のアルサス追放も正しい選択の一つなのだろう。
実際に凱も、自分がいるだけで憎しみの感情に苛まれても、自身が出て行くことで荒んだアルサスの民の心が和らいでくれるなら――と思っている。
テナルディエに『力』という法理に従わされた彼らは、どうしようもなく弱かった。
その弱さに、彼らは耐えきれなかった。
だが、抗弁するフィーネが納得するかどうかは全くの別問題だ。
「ちょっと待ちな!ガイは今のブリューヌにとって最後の希望なんだよ!?むしろ本当にガイを追い出したら、何の心配もなくアルサスを再び襲ってくるんじゃないのか!?」
確かにテナルディエは約束通りアルサスを返還した。
しかし、不可侵条約を結んだわけでもなく、例え結んだとしても、破約してアルサスに再侵攻する可能性は否定できない。
戦争は――正しいものが勝つのではない。
最後に生き残ったものが正しいのだから。
「ガイさんはここに来るまで、命を懸けて戦ってきたんです!異端審問から生きて帰ってきてくれたガイさんを――――!?」
フィグネリアは理を説いて、ティッタは情で民達に声をあげて訴える。荒み切ったアルサスの民の心に届くように。
「俺はアルサスを出ていく」
「…………え?」
――ガイさんが……アルサスを……出て……いく?
少女、ティッタ、フィグネリアが同時に凱に振り向く。
「あの……ガイさん」
ためらいがちにティッタが聞いた。
「その……あたしたちを恨んでいますか?」
「恨むとか恨んでいないとかそうじゃない。もし……もし、俺がアルサスにとどまるのならば……俺を見るたびに、みんなが憎しみにうなされる。アルサスのみんなに罪はない。ただ弱いだけならば決して悪じゃな
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