第24話『暁のティッタ〜勇者が示すライトノベル』
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今となって、エレオノーラ=ヴィルターリア……エレンの言葉の意味が深く凱に突き刺さる。
やらなければ、自分が殺されるのではない。
やらなければ、自分を愛する隣人が殺される。
大切な人を、父を、母を、故郷となった村が、炎となって消えていく。
ティッタの居場所を、血で汚したくない――その驕りが、誰かの存在を血で染めてしまった。
――彼女が俺を見損なうのも当然――
吹き荒れる感情の嵐が、深い爪痕を残しながら凱の全身を駆け巡る。
ほんの一筋の涙を見せたあと、感情の痛みに耐えきれず凱は少女を抱きしめた。
「俺のほうこそ――ありがとう」
泣くな。今のお前は泣くことさえも許されないはずだ。
突然と両腕に身体の自由を奪われた少女は、漠然として、その表情に硬直の色を浮かばせる。
絶望の崖に立たされた境地の中、少女の言葉で凱は救われたような気がした。
だけど、自分を肯定する少女の厚意に、本来ならばそのぬくもりに甘えてはいけない。
いけない……はずなのに。
どうして涙は止まらないんだ?
――俺が殺したんだ――
――俺が奪ってしまった――
――神様――
――どうして俺のような鬼人を生み出した?――
――――もう俺は何をすればいいのかわからない。
アルサスに吹く銀閃の風は、何も教えてくれない。
――――――こつん!
頭に『何か』を叩きつけられて、一滴の血が凱の額を伝う。
吹き付けてきた風と共に叩きつけられたのは、ちっぽけな石ころ。
誰が投げたかはわからないまま、『もう一人の有力者』なる老人が凱の前に躍り出た。
「すまぬが、ガイ殿はアルサスから出て行ってくれ」
夜風より冷たい通告に、ティッタは魂を砕かれた感覚に見舞われた。
「……どうして」
震える声でティッタは問う。
「どうして!ガイさんがアルサスを出ていかなければならないんですか!?」
いったい何の茶番だ?
眉間に青筋を立てたフィグネリアがティッタにかわる。
「あんたたち!自分が何を言っているのかわかっているのか!?余所者の私が口を挟むことじゃないけれど、アルサスを守ってくれたのはガイじゃないのか!?だったら――」
「だからこそ……じゃ!」
「なん……だって?」
思わぬ村人の反撃にフィーネは言葉に詰まる。
「本当は我々にだって分かっておる。悪いのはアルサスを襲ったテナルディエの連中だって――だが、『他人より優れた』ガイ殿がそばにおると……どうしても恨みをぶつけずにはおれんのだ」
それは、人より優れた力を持ちながら、そのチカラを出し惜しむ?
それは、生きていたなら、なぜ今まで現れなかった?
来てくれれば、『人を超越したそのチカラ』で誰も傷つかず、死
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