第24話『暁のティッタ〜勇者が示すライトノベル』
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したあの瞬間。
憎しみの輪廻にとらわれた者を垣間見た、少女の視界。
「―――――!?」
迷ったように震えていた少女の身体だったが、刃物を握りしめる手に誰かの手が添えられて震えを止める。
手の主の正体は獅子王凱。
驚き様に振り返ると、少女は滂沱の涙で目を埋め尽くしたままで、凱の顔を見上げた。
かまわず、凱はテナルディエ残党のカタマリと、アルサス住民との間に割って入る。
言葉でなく、行動で示そうとする。これ以上、憎しみで身を焦がすのはお互い本意ではないはずだ。
その姿、かつての黄金の鎧を無くしても、まごうことなき獅子王凱だという認識を村人にさせた。
数間をおいて、村人の誰かが口を開いた。
「……どうして?」
突然の疑問符。その言葉が、歩み寄ろうとした凱の足を止めた。
「どうして!!もっと早く来てくれなかった!?」
さらなる言葉が、語り掛けようとする凱の理解を止めた。
頬と心に凍てつく夜風が吹き抜ける。
「あんたが!もっと早く来てくれれば!こんなことにはならなかったんだ!」
夜風の冷たさと、村人の言葉の冷たさに対して、凱は目を見張ってその場に立ち尽くす。
空気の翼はためかせたのはフィグネリアだった。
「それが――」
助けた者に投げかける言葉なのか――あまりにも身勝手な言葉に彼女は憤慨する。
それ以上は言えなかった。凱が片手を伸ばしてフィーネを制したからだ。
「??すまない」
かつてないほど沈痛な面持ちで、凱は村人たちに頭を下げた。その瞳の涙腺は崩れかけている。
一度『鎮火』したはずの『炎上』が再び燃え盛り始める。
「あんたなら!いち早くここへ駆けつけて、テナルディエの奴らを蹴散らせたのに!」
ザイアン率いるアルサス襲撃戦のおり、『罠縄』を提供してくれた民婦の一人が、凱の前に躍り出た。
奴隷を象徴する『足枷』の鉄球を、足首につけたままであるにも関わらず。
「あんた――自分が他人より優れているからって、いい気分になってないか!?」
その言葉が、凱の胸に突き刺さる。
奴隷の重労働でできた、痩せ細った指とは思えないほどの力を籠め、凱の袖をつかむ。
血に滲み切って、皮膚がささくれて赤黒く染まる指を握りしめて。
やり場のない怒りが、次々と凱に向けられる。
結局、自分たちがテナルディエ達『銀の逆星軍』に立ち向かうことができないから、心の片隅で凱に頼り切っていたのだろう。異端者となり帰らぬ凱を『必ず帰ってくる』と、最後まで信じて。
きっと、黄金の騎士様が助けてくれると。
だが、結果はご覧の通りだ。
魔王はアルサスに居座り、奴隷としてこき使い、怨嗟と悲しみの声を叫び続けたにも関わらず、あの人――シシオウ=ガイは現れなかった。
本当は、頭の中
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