第24話『暁のティッタ〜勇者が示すライトノベル』
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成りえれば、あるいはきっと――――
「お前ひとりが誰かに助けを求めても、何でもできるわけではない。皆を巻き込んだところで、お前自身の物語をつづろうとしても、たかが知れている。お前は勇者であって編者ではあるまい。お前にそんなことをできることは誰も望んでもいない」
記憶に残したい光景があるならば、その手の描写家に。
記録に記したい文章があるならば、その手の脚本家に。
「一人の人間が絆護できることなんて、たかが知れている。ついでに言うと欲張りなんだよ。お前は」
黒竜の化身に言われるままに指摘を受けた凱は、「だけど」と声をあげようとしたとき――
「だが、獅子王凱という勇者にしか、できないことがある」
「俺にしか……できないこと?」
王の役目は、勇者の使命を思い出させること。
だからこそ、伝えたい言葉がある。
届かなくていい言葉なんて存在しない。
「その人の隣に……ココロに寄り添うことだ」
「その人の……ココロの……となりに?」
それは、かつて大河長官にエヴォリュダーという単語を聞かされた言葉だった。※17
Gストーンとの融合を果たした凱は、宇宙空間さえも生身で進出することが可能になり、アンリミテッドへとさらに進化したことで、隣人に並び立つ重要性がより一層現実味を増した。
エヴォリュダー。アンリミテッド。凱の肉体に多くの機転を強いても、隣人に寄り添うという使命はいささか揺らいでいない。
作者が抱く恐れを
「戦姫のチカラを恐れるあまり……俺にはあいつらの隣に立つことはできなかった。チカラで忠誠を誓わせても、心だけは遠くへ離れるばかりだった」
一騎当千を超える何かがある。自分が貸し与えた竜具を今以上に使い、やがて戦姫から、いつか王を打倒する勇者が生まれるのではないかと。
全ての人に純真を示せる凱ならば、戦姫の隣人にもなりえるのでは。
「貴方にとっては畏怖の対象かもしれないけど、俺にとっては、ティナをはじめとしてみんな、みんな大事なんです」
「……ガイ。お前の不殺を否定する『銀閃の風姫?シルヴフラウ』も?」
「はい」
その答えに迷いはなく、簡潔と簡素を極めた。
――お前がうらやましい。そうして迷いなく大切な人と言えることができて。
もっと、そう、あと300年ほど早く出会えていれば、テナルディエ一族に禍根を残すこともなかっただろうな。
あの時は……仕方がなかった。
優しい瞳のままで、黒竜の化身は言葉を再開した。
「そのひとの隣に立つ。ただそれだけでいい。勇者と王――そのどちらにもなり得るお前にしか、できないことなんだ」
「勇者……
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