第24話『暁のティッタ〜勇者が示すライトノベル』
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ろいことを吠える勇者気取りさんに、イキな置き土産を残したのだ。
「あと、負け犬の部下は私には不要。ドナルベイン達は貴様たちで好きにせよ」
湧き上がる衝動の正体。
冷たい水が一気に沸騰するかのような空気。
今まで支配されていた重圧が解放を求めてドナルベインに襲い掛かる。
ドナルベインという脅威の存在が無力となり、今まで自分たちを苦しめたテナルディエの部下に、村人たちは報復をしようとしていたのだ。
「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!」
「やめろ!やめてくれ!勘弁してくれ!オレ様が悪かった!だ……だから!」
口々に命乞いをするドナルベインとその配下たち。しかし、村人たちの憎悪は止まらない。
「……………」
絶句したまま、凱はその光景を見続けている。
これは魔王テナルディエからの報復宣言のだろう。
人間の素面。そして本性。これこそが摂理。
己が憎しみに酔う。
それは、この世の美酒を飲んでも味わえない極上の世界。
シシオウ=ガイ。お前の正義を否定する真理の正体がこいつだ。
『憎悪の炎』に比べて、貴様が信じる甘っちょろい『勇気の炎』はいかがなものか……と。
炎上商法??。憎悪という名の話題で人々の心を燻り続ける怨嗟の火種。※1
目の前の光景は、かつて完遂することのできなかった、アルサス焦土作戦に対する『皮肉』そのものだろう。
「やめてください!こんなことをしても!取り戻せるものなんてなにも!……」
大気を裂かんばかりの声で訴え、何とか村人たちを静止しようとするティッタだが、彼らは静止する様子さえ見せない。
ウルス様から受け継いだアルサスが、ティグル様が守りたいと願ったアルサスが――。
(ティグル様がいないだけで――こんなにも世界が崩れていく)
止めようとしているのはティッタだけで、力及ばず大勢である村人を止めるには至っていない。
復讐鬼となった村人達の戦闘に、母親を殺された『あの少女』が震えながらティッタの前に躍り出る。
「ほれ!お嬢ちゃんも『母ちゃん』の敵を討つのじゃ!ドナルベインが憎かろうて!」
こともあろうに、『有力者』※2の肩書を持つ老人が、少女の震える手に、短刃を持たせようとしている。
口の端から唾を飛ばして怒鳴っている老人の形相は、憎しみに打ち震えて心に住み着いた『鬼』そのものだった。
年端もない少女に憎しみを持たせようとする光景に、ティッタは唖然とした。
憎悪の熱気にあてられて、少女の唇がふるえる。
「あたしは……お母さん……の……」
脳裏によみがえるは、凱が『王』に立ち戻ったあの瞬間。
死ね――と、たった一言命令
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