「言葉はむずかしいです……」
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で湯を注いでみれば、背後からキリトに呼びかけられる。その口調はしごく真面目なモノであり、ショウキもそんな口調で問い返したものの、キリトが言わんとしていることは分かっていた。
「二人とも……まるで人間みたいじゃないか」
「それはうれしいです」
「…………」
「…………」
壁の向こうからではなく、近くから鈴の音のような声が響き渡り、キリトの言葉でシリアスになりかけた空気が一瞬で雲散霧消する。温泉に入る前にお湯を被っていた動きが、ショウキもキリトもピクリと止まり、見よう見まねで被った少女からお湯が流れる音だけが大浴場に響いていた。
「気持ちいいです」
「……プレミア」
「はい」
「女湯は、向こうだ」
「ショウキと『はだかのつきあい』がしたかったので」
「…………」
「ああ、じゃあ、ごゆっくり……」
どこで覚えたのか、畳んだ小さなタオルを頭の上に乗せながら、プレミアは首まですっぽりと温泉に遣っていた。聖大樹ご自慢の濁り湯にこれほどまでに感謝したことはなく、逃げ出そうとするキリトを捕まえながらも、ショウキはどこかデジャヴを感じていた。
ログインしてからすぐ。何やら勘違いしたプレミアがどうしてかショウキを尻に敷いてきて、明らかに字面が酷い有り様になった時、そう、一番に勘違いされたくないような人の声が――
『ショウキー!? プレミアがいないんだけど……まさか、そっち行ってないわよね?』
――デジャヴ、というよりループだったようだ。
……そうして、翌日。それぞれの種族領と《MMOトゥデイ》から、公式から未発表の大型クエストについてが発布されていた。エルフたちを襲う謎の呪いは浮遊城全体に広がっており、エルフたちと協力してそれらを討伐するというもので。
その情報の元締めは、《鼠》と呼ばれる情報屋だった。
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