第二十八幕:曇り時々虹!?
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に、お母様が謝ってくださったの・・・息子は珍しい事があると写真をすぐに撮ってしまうから・・・って」
凪咲さんの話を訊いて神経が揺さぶられた。ここ最近、許可無く七夏ちゃんを撮影していた俺も、人の事を言えないじゃないか! 少し調子に乗っていた事を反省した。
凪咲「ありがとう。柚樹君」
時崎「え!?」
凪咲「七夏の事を想ってくれて」
時崎「・・・・・」
凪咲「さっきも話したけど、女将としてはお客様は大切ですけど、母親としては七夏が何よりも大切ですから」
時崎「凪咲さん・・・」
凪咲「だから、柚樹君が七夏の事をかばってくれた事は、母親としてとても感謝しています。ありがとう」
時崎「・・・はい」
凪咲「私からのお話はこれでおしまい。ごめんなさいね」
時崎「いえ、こちらこそ」
凪咲「では、失礼いたします」
そう言うと、凪咲さんは、自分の部屋へ向かったようだ。俺はそのまましばらく考える・・・。今まで沢山の七夏ちゃんを撮影してきた。写真が苦手な七夏ちゃんは、無理をしていたのではないかなと思ってしまう。もしそうだとすると、今まで撮影してきた写真は、全て写真では無くなってしまうので、そうではないと信じたい。
時崎「いや、七夏ちゃんの笑顔は本当の心だ!」
自分にそう言い聞かせ、これからも七夏ちゃんの笑顔を撮影しなければと強く思う。今まで沢山の七夏ちゃんを撮影してきたこの写真機・・・俺は写真機のファインダーを覗き、七夏ちゃんを初めて撮影した時の事を思い出す。初心に戻る・・・というよりも、もう一度、あの時の感覚を呼び覚ましたい・・・。ファインダーの中に七夏ちゃんが居ると想像する・・・すると、ファインダーの中に七夏ちゃんが現れた。
七夏「柚樹さ・・・ひゃっ!」
時崎「あっ!」
七夏ちゃんは、俺の構えていた写真機に拒絶反応を示したけど、すぐにそれを掻き消した・・・でも、こんな時に限って、俺はその七夏ちゃんの一瞬の拒絶した表情が脳に焼きついた。
七夏「ご、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
俺は慌てて写真機を隠したが、七夏ちゃんは居なくなっていた。
これまで大切に築き上げてきた事が、一瞬で崩されたような感覚だ。
・・・治りかけた心の傷の「かさぶた」を、俺が取ってしまったような感覚を覚える・・・もう、この写真機で七夏ちゃんを撮影する事は出来ないのだろうか?
他人の事を気遣える七夏ちゃんに対して、他人を気遣えない自分が許せないという感情が芽生えた瞬間だった。
時崎「こんな事で、終わらせていいはずがないっ! こんな事で・・・・・」
ピピッ!パシャッ!
写真機から音が聞こえた・・・力強く握り絞めていた勢いでシャッターボタンを押してしまったんだろう・・・だけど、そんな事はどうでもいい。
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