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翠碧色の虹
第二十八幕:曇り時々虹!?
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昨日の事を考えると、今、声をかけるべきではないと思った。
しばらく、部屋の窓から外の景色を眺める・・・。降り続ける雨と雨音が「まだ早かったのでは?」と問いかけてくるようにも思えた。こんな事が、続くのは嫌だ。これから先、七夏ちゃんと一緒に楽しく過ごしたい。昨日「俺が七夏ちゃんを支えてあげなければ」なんて思った事は、なんだったのか・・・思うだけなら簡単だ。実際にそうなった時に、思っていた事が実行に移せないのなら、思う事自体が罪な事になる。
そのまま、窓の外を眺めていると、大きな花が2つ咲いた。一つは赤い花、もう一つは黒い花だ。その2つの花は、雨水に流されるかのように風水を離れてゆき、お客さんが帰られたのだと理解できた。そのまま、しばらく景色を眺めていると−−−

トントンと扉が鳴った。

時崎「七夏ちゃんっ!」

俺は、扉へと急ぐ。

凪咲「柚樹くん、ちょっといいかしら?」
時崎「凪咲さん・・・・・はい・・・」

凪咲さんの後を付いてゆく・・・居間へ辿り着くまでに、凪咲さんから言われる事は既に分かっていた。俺は、先手を打つ。

時崎「凪咲さん。すみませんでした」
凪咲「・・・・・」

俺が先手を打って謝った事に対して、凪咲さんの表情は少し和らいだようにも見えた。

凪咲「分かっているとは思うけど、女将としては大切なお客様に失礼な事があってはならないの」

大切なお客様!? 何が大切なんだ? 七夏ちゃんが傷つけられても、それでもお客様の方が大切なのか? 分からない・・・分からないよ・・・。

時崎「でも、お客様が『失礼なこと』をしてもですか?」
凪咲「そうね」
時崎「そんなっ!」

七夏ちゃんが悲しんでもいいの!? 冷静になって考えてみたけど、やっぱり分からない。

時崎「凪咲さん、やっぱり俺・・・分からない・・・七夏ちゃんよりも、今日始めて会ったお客の方が大切だなんて・・・」
凪咲「女将としては、お客様が大切」
時崎「・・・・・」
凪咲「でも、母親としては、何よりも七夏の事が大切」
時崎「・・・・・え!?」
凪咲「ありがとう。柚樹君・・・分かってもらえるかしら?」

その言葉を聞いて、女将がどういうお仕事なのか理解・・・というよりも安心できた。俺は焦って「木を見て森を見ず」の状態になっていたようだ。
七夏ちゃんの事が大切な事に変わりはない。だけど、それだけではならないという事を凪咲さんは言いたかったのだと思う。

凪咲「お客様は知らない事ですから・・・」

<<時崎「七夏ちゃん、ごめん!」>>
<<七夏「仕方がないですよ。柚樹さんは、知らなかった事ですから」>>

以前に七夏ちゃんが俺に話してくれた事を思い出した。

時崎「・・・すみません」
凪咲「お客様が帰られる際
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