斬月編・バロン編リメイク
拝啓、美しい人へ
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くんですか? 私はあなたのお兄さんを、殺そうと――」
「したね。でも、えっと、ちょっと今は訳アリで。とにかく、お兄さんたちより藤果おねーさんのが心配だったの。だからここで、生きててくれてよかったなって」
藤果はまじまじと咲を見上げた。信じられないものを見る目だ。
「――私はたったさっきまで、あなたの上のお兄さんと戦ってた。殺すつもりだった。彼は、私に――とどめを刺さなかった。生かしておいたらまた命を狙うって、言ったのに――本当に甘い、ひと。どうしてあんな優しい人が――」
咲の頭に小さな疑問が浮かんだ。――藤果は本心から貴虎を殺したいとは思っていなかったのではないか、と。
使い古された言葉だが、その気になればいくらでもチャンスがあった。料理に毒を盛る、寝込みを襲撃する、兄妹の誰かを人質に取る、etc――
なのに、藤果はアーマードライダーとなって敵対した。貴虎も光実も歴戦のアーマードライダーであれば、彼女の選んだ殺害方法は下策中の下策だ。
「まだ……足りない? まだ、おねーさんの気持ち、満たされない?」
「……もう、分かりません。だって、私はたったさっき、貴虎に殺されました……呉島に復讐しなければみんなが浮かばれないと信じていたコドモは、さっき、死んだんです……あなたが、兄弟より私を心配だと言ってくれたように……私も、ここで殺された仲間たちより、貴虎ひとりへの想いが上回ってしまった……ねえ、お嬢様。もうどちらも憎みきれないし愛しきれなくなった私は、どこへ行けばいいんでしょう――?」
藤果がこれから行くべき場所。その答えなら咲にも分かる。
「病院行こう」
「――え」
「病院でケガ治してもらいに行こう。それで元気になったら、カウンセリングに行こう。あたしも昔……いじめられてた時期、ごはんの味がわからなくなったこと、あるの。その時のカウンセラーさん、紹介するから。そしたら、おいしいもの食べて『おいしい』って感じられるようになるし、アップルパイも今よりおいしく焼けるようになるって」
「――何ですか、それ。まるで夢見がちなコドモみたい」
「だ、だって正真正銘、コドモだもん! しょーがないじゃん!」
「ふふ……そうですね。あの貴虎に育てられた子だから、きっと大人びたしっかり者だって、勝手に誤解してました……あなたは本当に、“普通の女の子”として育てられたんですね……」
「――そうだよ。『呉島碧沙』はね、どんな家に産まれてどんな立場になったって、『ただの碧沙』なの。忘れないで」
無事に元に戻れた時に、藤果に、本物のヘキサを咲のようなじゃじゃ馬だと思われないように、念のための注意だ。
藤果は苦笑しながら、戦極ドライバーからリンゴのロックシードを外して、咲に差し出した。――自ら戦うための力を、手
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