斬月編・バロン編リメイク
あなたを傷つけたくなくて side咲
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様の最期は、それはそれはみじめでしたよ』
ひゅっ、と咲は息を呑んだ。
(殺し、たんだ。おねーさん、ヘキサたちのお父さんを殺したんだ!)
インベスというある種の緩衝材を経由せず、人が同じヒトを、殺す。その現実の壮絶さに咲は震えを禁じえなかった。
光実が咲を自分の後ろに隠す位置に立った。
「目的は復讐ですか。父が死んでも止まらないということは、あなたは」
『ええ、そうです。だってユグドラシルは残っている。まだ呉島天樹の血を引くあなたたち、それに……呉島貴虎が、生きている。私の復讐は終わってない』
「……めて。やめて、おねーさん!」
昨日にほんのひと時を共にした藤果を思い出す。
咲を気遣って、咲に笑いかけた藤果。優しくて素敵なオトナの女性。
もしかしたら彼女となら仲良くなれるかもしれないと期待した。もしヘキサと入れ替わったまま戻れなかった時、藤果にだけは本当のことを話せるかもしれないとさえ。
『だめです、碧沙お嬢様。私、今でも覚えてるんです。あの施設でユグドラシルのお眼鏡に適わなかったみんなのこと。オトナたちに無理やり連れて行かれる子たちが、泣いて抵抗して、私に「助けて」って言いながらドアの向こうに消えていった。人間のものとは思えない悲鳴を聞いて、いつ自分の番が来るか怖くて布団の中で震えてた。どんな些細なことでオトナの目に留まるか不安でご飯の味なんてちっとも分からなかった。天樹様の付き人になることが決まった時の、みんなの、「裏切り者」って言ってたあの目! 何もかも私、覚えてる!』
咲は、はっとした。
昨日食べた、藤果が焼いてくれたアップルパイのちぐはぐな味。あれは藤果が作るのが下手だからではなく、味見する藤果の味覚に異常があるからだとしたら。強いストレスからそういう症状が起こりうることを、咲も一時期患っていたから知っていた。
『呉島天樹に関わるもの全て、この世から消し去ってやるッ! わあああっ!!』
イドゥンが片手剣を振り被って向かってくる。
光実が戦極ドライバーを装着し、ブドウの錠前を開錠した。
「変身!」
《 ハイーッ ブドウアームズ 龍・砲・ハッハッハッ 》
紫翠の甲冑が光実を鎧い、龍玄へと変えた。
龍玄がブドウ龍砲を逆手に持って、イドゥンの剣戟を受け止めた。
『あの人の背中に隠れてた光実お坊ちゃまが、ずいぶんと威勢よくなったこと!』
身を縮ませて見守るしかできずにいた咲の耳に、早い歩調の足音がした。エントランスホールからだ。
「光実! 碧沙!」
その呼び声を聞いた時、咲はなりふり構わなかった。
「ここよ!! 助けて、兄さん!!」
部屋のドアが乱暴に開かれた。入って来たのは、
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