斬月編・バロン編リメイク
あなたを傷つけたくなくて side咲
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ほぼ同時に、一瞬前まで立っていた位置を剣閃が奔った。
「アーマードライダー!?」
襲撃者は、紅玉のアームズをまとった女騎士だった。
紅玉のアーマードライダーは間髪入れずに再び片手剣を突き出した。刃は今度、光実の右肩を掠めた。コートが裂けて、布地が血でみるみる真っ赤に濡れていく。
光実は痛みが酷いのか、咲を抱えたまま頽れ、右肩の傷口を押さえて歯を食い縛っている。
「ぁ、あぁ…っ」
紅玉のアーマードライダーがゆっくりとこちらに歩いてくる。
咲は応戦すべく戦極ドライバーを出そうとして、今の自分が「呉島碧沙」なのだと思い出した。ヘキサに戦う術はない。身を守るすべさえ、あの子は持っていなかったのだと、今、知った。
咲が痛いのは、いい。だが、この体はヘキサのものだ。
万が一、ヘキサの体に一生消えない傷跡でも残してしまったら。
そう想像したら。こわくて、前に出られない。
(ああ、ヘキサ。あなたはこんなにこわい思いをしながら、あたしたちの戦いを見守っててくれたんだね)
その時に咲が浮かべた表情は、光実にとっては妹の恐怖に映ったのだろうか。光実は無理のある笑みで咲を背中に隠し、紅玉のアーマードライダーを睨みつけた。
「……誰だ、お前」
『誰か……そうですね。仮に、イドゥン、とでも名乗りましょうか。覚えていただかなくて結構ですよ。すぐにお二人とも死にますから』
紅玉のアーマードライダーの声に、咲は聞き覚えがあった。
「藤果おねーさん?」
イドゥンは片手剣を振り上げようとした腕を、ぴたりと止めた。
「おねーさん――藤果おねーさんなの!?」
『……迂闊に返答すべきじゃなかったわね。ええ、その通りですよ。碧沙お嬢様』
藤果がアーマードライダーであったことも疑問だが、咲はもっと切迫したほうの疑問を先に口にした。
「どうしてあたしたちを――」
『あなたはあなたたち兄妹の父親が裏で何をしていたか知ってますか?』
イドゥンはフラットな口調で語った。
――かつて呉島天樹が慈善事業と銘打って設立した孤児院の内実。ユグドラシルという組織の将来の指導者、研究者、工作員などの人材育成。しかし「不適格」の烙印を押されたコドモたちは――
「人体、実験……」
光実が呆然としたように呟いた。
(こんな、こんな大変なこと、ヘキサにどうやって伝えればいいの! あたし、ヘキサに隠し事なんてできない。でも、死んだお父さんが、あたしたちくらいのコドモで人体実験してた、なんて、どう言ったってヘキサは絶対傷つく)
『あなたたちのお父様もヘルヘイムに侵されていたんですよ。そのためにみんな犠牲になった』
「まさかあなた、僕らの父を――」
『天樹
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