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機械の夢
第01部「始動」
第05話
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らないの?」
 流れるように声が出てきた。聞きたいこと。問いたいこと。一杯一杯…アキトは私が要らないの?
「そんな事ない。俺はラピスに助けられた」
「私はアキトと一緒に居たい。嫌わないで、アキト……アキト。行かないで…おね…が、い。わたしをおい、て…かない、で」
 視界が歪む。アキトの顔がボヤけて見える。目が熱い…なんだろう…雨が降ってるの?頬に水が流れているよ?
「ごめんな…ラピス………ごめん」
 頬にアキトの暖かい手が触れた。胸がスッと軽くなる。アキトは私を守ってくれた。アキトが私を……私はアキトに…………
「…アキト」
 アキトに抱きつく。腕の感覚はしないけど、アキトの匂いに包まれて私は意識を失った。

--
 目が覚めた。隣を見ると、静かな寝息を立てているラピスがいる。目尻には涙が微かに残っていた。
 俺はラピスを泣かせてしまった。今後笑って貰うためにやった事でラピスを傷つけた。
 覚悟していた事なのに、胸に残ったのは例えようの無い嫌悪感だけだ。失敗した上に泣かせては、何のためにしたのか分からない。
「気が済んだかい?」
「何故邪魔をした…アカツキ」
 ベッドから降りる。入口を出て通路に出ると、アカツキが腕を組んで待っていた。
 船の動力は完全に落としていた筈だ。俺じゃなければ、アカツキじゃないと船の動力は動かせない。
 動力が戻れば、停止させていたラムダが起きる…最後に俺の干渉を邪魔をしたのもラムダの筈だ。アカツキのIFSにそれをするだけの機能はないからな。
「外道になりかけた気分はどうだい?」
「なに?」
 確かに強引な手だったかも知れない。だが、それは!
-ドスッ-
 グッ!
 気がつけば、アカツキの拳が脇腹に突き刺さっていた。避わそうと思えば避わせただろう。だが、何故か体が動かなかった。
「解って無いね?こんな馬鹿な事をしたくらいだ。考えもしなかったのかい?………今の君は奴等と同じさ。他人の意思を踏みにじった下衆野郎さ!」
「違う!俺はラピスの為に…ラピスを想ってした事だ!」
 今度は左の拳が飛んできたが、当たる寸前で掴み止めた。
「違わないね!君は只逃げたかっただけさ。ユリカ君から!ルリ君から!ラピス君から!」
 拳が蹴りが乱舞する。ネルガルの会長とはいえ、以前は前線でエースを張った腕だ。腕前は錆び付いているが、それでも気迫は以前より上だ。
 少しずつ押されている。反撃しようにも体が上手く動かない。
 何故だ?くそっ…くそっ………くそ!!
「言えないかい?言えないだろうね!一緒に居ると心が痛いって!消えてしまう程に苦しいってさ!」
「うるさい!!」
 加減無しの拳が飛ぶ。
 常人を越えた筋力から繰り出された拳が吸い込まれるようにアカツキに当たる。
「効かない…ね!」

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