01.三匹の迷い猫
Prologue
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
暗闇と静寂に包まれた街。
道路脇に立ち並ぶ高層ビルの灯りは消され、街灯の灯りも消されている。
一歩路地裏に踏み入れば、其処は漆黒の、闇の世界。無事帰って来る事が出来る保証は無い。
―――否、外に居るだけで、明日が来ると言う保証は無かった。
紅い雲に覆われた空。仄かに光を放つ濃い霧。不気味≠ニしか言えない場所だった。
銃で武装した、白い外套を羽織った男が五十、街の至る所に居る。無くした物を探すように、男達は街の中を歩いていた。
そして、妖しげに空に浮かぶ月は、雲の隙間から彼等≠照らしていた。
「はいはーい、こちら指令係―。聞こえてますかー?」
交差点の一角にある高層ビルの屋上に、独り携帯電話を耳に軽く当て、喋る少女が居た。
所々が解れたり、汚れていたりして、ぼろぼろになった黒い外套の裾を靡かせ、少女はもう一度携帯電話に向けて喋る。
「元気にしてる? 響也、千尋」
口の端を吊り上げ、喉の奥でクツクツと笑う少女は、そっと屋上の柵に腰を掛ける。
この都市のビルは雲の高さを超える。万が一柵から落ちたら確実―――いや、必ず死ぬ。
だが、少女は足をぶらぶらと揺らし、躰を前後に揺する。死を恐れていないとしか思えなかった。
その時だった―――街の外れにひっそりと建っていた廃工場が、大きな音を上げて爆発したのは。
街の人々が家から出てくる事は無い。此処には人が住んでいないのだから。
『オイ、馬鹿琴葉。こっちは終ったぜ』
携帯の向こうから、初めて声が返って来る。それは低くも高くも無く、苛立ちを含んだ声だった。
「りょーかぁい。じゃ、そのまま街を突っ切ってね。で、出来れば白猫の司令官と相討ちになって死ね」
『死ぬかボケ?』
画面越しでも分かる、かなり苛立っている様子。今電話の相手と会ったらどうなるか分からないと想像し、少女は苦笑を浮かべた。彼女の頭には、割れた地面に血を流して倒れこんでいる、自分の姿が映っていた。
すると、ブオォンと重低音が街の中に響き渡った。
「うふふ……存分に暴れ給え、響也」少女が呟く。その視線の先には、一人の少年が居る―――。
一台の単車に跨り、静かに目の前のビルを眺める少年。前髪の奥から覗く瞳が、古くなったビルを綺麗に映し出す。
カチッ。少年は腰に付けたポーチから球体のそれ≠取り出し、それ≠ビルに向けて放る。そして、単車のスロットルを乱暴に回して、その場から去っていく。
直後―――先程、少年の目の前にあったビルが一つ、大きな音を立てて崩壊した。
瓦礫が地面に落下し、大きな音を立てる。鉄骨が道路に落下し、放射線状の罅が入る。破片が砲弾の様に辺りに飛び散る。
『琴葉。今そっちに五人向かった。そろそろ柵から降りて居ろよ?』
また通話口の向こうから声
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ