生存戦 4
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狙って、いっせいに触手で上からつかみかかるつもりなのだろう。
それでさっきから剣の近くを動こうとしないのだ。
(怪物のくせして考えやがる。……おもしれぇ、それに乗ってやろうじゃねえか)
ジャイルは深呼吸すると剣に向かって駆け出した。スキュラの表情に勝ち誇った笑みが浮かぶ。ジャイルの突進を受け止めるかのように触手が左右に広がる。
だがそれこそジャイルの狙っていた一瞬。
彼は剣の手前で急に方向を変えて地面を蹴って飛び上がった。スキュラは完全に虚を突かれ、その動きに対応できなかった。触手の動きが乱れ、むなしく空を切る。
ジャイルは巨体に似合わぬ軽捷さを見せて触手を飛び越え、スキュラの上半身に組ついた。おどろいて身をそらそうとする少女の髪の毛を左手でつかみ、引きずり戻すと同時に腰のダガーを抜いて少女のかぼそい首に突き立てた。
血が噴水のように飛び散り少女の口からくぐもった悲鳴があがる。
(やったか!?)
だがまだスキュラは生きていた。
触手がジャイルを包み込み、蛇が噛みついてきた。
「しぶてぇやつだ!」
ジャイルはダガーをノコギリのように前後に動かし、首を切断したが、スキュラの下半身は別の生き物であるかのように、まだ活発にうごめいている。
すさまじい生命力だ。
触手が首や腰に巻きつき、ものすごい力で締め上げてくる。
蛇の牙が頭に、腕に、胴に、脚に突き立てられる。
ジャイルの体は怒り狂った怪物の最後の猛攻にさらされた。
全身から血が流れ、激痛が広がる。
【ボディ・アップ】の効果が切れたのだ。
スキュラが絶命するのが先か、ジャイルが力尽きるのが先か――。
「へっ、根競べなら負けないぜ。胆の勝負じゃ、俺はだれにも負けねぇ……」
――《慈悲の天使よ・遠き彼の地に・汝の威光を》――
ジャイルは薄れゆく意識のなかで、だれかの唱える呪文の声を聞いたような気がした。
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