生存戦 4
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
自身の手で殺してやる!」
無数の触手がジャイルを包み込むように迫るのを、右に左に体をかわし剣を振るい、触手の攻撃を払いのける。
まるで数人の敵を同時に相手しているようだが、そんなのはストリートで幾度も体験済みだ。
触手の動きは剣よりもずっと遅い。のたうつような動きにまどわされずに落ち着いて正確に動きを見ればじゅうぶんに対処できた。
また一本、触手が切り落とされた。他の触手もかなり傷ついている。ジャイルも派手に返り血を浴びてはいたが、最初に受けた腹部以外は無傷だった。
蛇の頭がなんどもぶつかってきたが、生来の頑強さにくわえて【ボディ・アップ】が防いでくれた。触手に絡みつかれることだけを警戒すればいい。
肉弾戦なら、負けはしない。
一瞬、そこに油断が生じた。触手の一本が振り下ろした剣に絡みついたのだ。もぎ離そうとしたが、別の触手が足に絡みついてきた。
とっさに剣の柄を離して触手を蹴って飛び退いたのは正しい判断だった。
これが正規の剣術を習った、騎士の戦いしか知らぬ者だったら剣を取り戻すことに固執し、足をすくわれて転倒していただろう。
ジャイルとスキュラとの間に距離ができた。危機は脱したものの形勢は不利となった。剣なしでは戦えない。ジャイルはハインケルやエマほどには魔術が得意ではないのだ。
「おとなしく死になさいよ、この筋肉小僧!」
スキュラは触手に深く食い込んでいた剣を地面に振るい落した。下半身はあちこちがズタズタに切り裂かれて血だらけで、その顔は怒りと苦痛に歪み震えていた。
「さあ、かかってきなさい。さっきまでの威勢はどうしたの?」
スキュラは自分からは動かなかった。
だが剣のないジャイルも迂闊には動けない。
無言のにらみ合いが続く。
夜の森にふたりの乱れた呼吸だけが大きく聞こえる。
どうする?
どう動く?
ジャイルは必死に考えをめぐらせた。逃げるのは問題外だ。仲間を見捨てて逃げるなどはなからジャイルの選択肢にない。そもそもこちらは地面の上しかまともに移動できないのに対し、スキュラは水中を自由に動ける。先回りされて奇襲を受けてしまうだろう。
ここで、この場で倒すしかない。
剣さえあればどうにかなりそうだが、愛用の片手半剣は今、スキュラのすぐそばに落ちている。ジャイルはそこまでの距離を目算し、飛びついて拾えるかを考えて、ふと疑問が生じた。
(なんでそこに落とした?)
少女は怒りに満ちた瞳でこちらを凝視している。が、蛇はどうだ? 少女は剣のほうを見ていないふりをしている。だが蛇の視覚はしっかりと剣を見張っている。
(罠だな、誘っていやがる)
そう、これは罠だ。
スキュラはジャイルが剣を拾いに来るのを待っている。剣に飛びついた瞬間を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ