生存戦 4
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してやる!」
ジャイルは異を唱えることなく黙ってハインケルの指示にしたがった。その手にはダガーよりも大きな片手半剣が握られていた。頑丈そうな拵えの剣は、魔術師らしからぬ筋骨隆々としたジャイルの体格によく似合っていた。
剣を帯びて生存戦に臨んだのはジャイルくらいだ。この生徒はいざとなれば【ウェポン・エンチャント】した剣で秋芳に挑み、「呪文がかかった剣で攻撃したんだからこれも魔術だ。それに魔術以外では攻撃しないという決まりはそっちだけに適応されているんだろ」と言うつもりだった。
「挟撃、ねぇ……」
うねる大蛇とのたうつ触手に捕まらないよう、木々の間を迂回してスキュラの背後に回ろうとするジャイルが皮肉げに口を歪めた。
無数の蛇の頭を生やしたこの怪物に背後などあるのだろうか? 蛇の目にも視覚があるとすれば、スキュラという生物は周囲を同時に見ることができる。
「〜〜〜♪」
スキュラは楽しそうにハインケルとジャイルを見比べている。どちらを先に殺すのか考えているのかも知れない。触手をくれねらせて、ずるりずるりと移動しつつ蛇の鎌首を空中に踊らせて威嚇している。
「《空気よ変じよ・戒めの楔・見えざる束縛の霧と化せ》」
エナが【痺霧陣】を唱える。触媒にグールの爪や痺れ茸を使った強力な麻痺の呪文だ。
スキュラの身体を麻痺の雲が覆う。
「なによ、これ。鼻がツーンとするんですけど」
【ショック・ボルト】を頭部に数発受けても痛手にならなかった怪物には通用しなかった。
さすがは魔獣といったところか、魔術に対する抵抗力は極めて高い。
「だったら削り殺してやる《紅蓮の炎陣よ》! 《続く第二陣》! 《更なる第三陣》! 《次なる第四陣》!」
「《大いなる風よ》!」
【ファイア・ウォール】による炎の障壁を展開しつつ、【ゲイル・ブロウ】による突風で進行を阻む。
相手が進んでくるのを防ぎつつ、炎によってダメージを与える。効果的な戦術といえた。
「よし、エナ。チェンジだ! 《拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを》」
【ストーム・ウォール】。正規の魔術書には記されない、システィーナのオリジナル魔術。先の魔術競技祭でこの呪文に押し負けたハインケルは己を負かした相手のオリジナルスペルを執念で習得し、自身のものとしたのだ。
よりいっそう足止めに特化した呪文で、相手を釘付けにして焼き殺す。
「オラァ!」
そこにジャイルが踏み込んだ。
吹きすさぶ風と燃える炎に巻き込まれないように――それでも多少の巻き添えは覚悟のうえで【ボディ・アップ】を重ねがけしての攻撃だ。
大蛇の鎌首がひとつ、切り落とされた。
「痛い!」
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