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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
生存戦 4
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夕焼けの赤よりも鮮やかな、血の色に。

「ぼけっとするな!」

 ジャイルの一喝に水から離れようとするクライスだったが、その動きは遅々としたものだった。足が、動かない。腰から下に力が入らない。
 まるで悪夢のなかにいるように、思うように体が動かなかった。
 恐怖に腰が抜けている状態だ。

「なんで逃げようとするの? こっちに来て遊んでよ」

 少女はほっそりとした両のかいなをクライスの背中にさしのべて歌うように口ずさんだ。

「あたしの一番古い大親友、ほの暗い水の精霊たちよ、その子と遊んであげて!」

 水が盛り上がり、クライスを飲み込んだ。水の帳に包まれたまま、沼のなかに沈んでしまった。

「精霊使いか!」

 精霊使い。ルーンとは異なる方法で、己自身の言葉で自然に呼びかけ、世界に干渉する精霊魔術の使い手。遊牧民族シルヴァース一族などは呪歌と舞踏による風霊召喚術で有名だ。

「《雷精の紫電よ》! 《続く第二射(ツヴァイ)》! 《更なる第三射(ドライ)》」

 続けざまの【ショック・ボルト】連唱(ラピッド・ファイア)。まばゆい光の噴流が夕闇を切り裂いて迸った。
 少女の頭部に命中し、光の粒子を撒き散らす。常人ならば間違いなく意識を失うか、最悪ショック死するような打撃だ。
 だが少女は軽く顔をしかめて頭を振るって、髪にまとわりついた雷線のなごりを振り払った。

「それでも魔術のつもり? 魔術とはこうするものよ。――あたしの変わった友だち、熱く燃える火の精霊よ、その子と踊って!」

 焚き火の炎が膨張し、輝きを増したかと思うと、小さな竜の形となってハインケルの体に巻きついた。
 火蜥蜴(サラマンダー)だ。
 少女は火蜥蜴を召喚してけしかけたのだ。
 ハインケル衣服に火がつき、全身が炎に包まれる。
 呪文を唱えるどころではない、声にならない悲鳴をあげて水に転がり込もうとする。

「ダメよ、ハインケル。水に入ったらあの蛇たちに襲われるわよ! 《還れ・在るべき場所へ・契約は棄却されたし》!」

 エナの唱えた【デポート・エレメンタル】によりハインケルに巻きついていた火蜥蜴が精霊界へと強制送還され、身を焦がす火炎から逃れられた。

「水には近づくな。水に入ればあの蛇どもの餌食だ。沼からはなれるんだ」

ジャイルは今にも水に飛び込もうとしたハインケルの肩をつかんで強引に引き戻すと、沼から距離をとるべく駆けた。

「で、でもクライスが水に! ベニアーノとルネリリオもっ」
「……逃げるとは言ってねぇ。陸地から、蛇の牙のとどかない場所から遠距離攻撃でやつをたおすんだ。こっちはまだ三人いるんだぜ」
「……そうだな、三人一組(スリーマンセル)が組める」

 やみくもに逃げるだけでは背後から魔
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