斬月編・バロン編リメイク
自由論インバース
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キサ、カイトとなんかあったのか?」
「えーと……いろいろ。うん、イロイロあった」
「……だれ?」
「あのそっくりさん? たぶんだけど、外国のちょっとしたとこのお坊ちゃま。少しフクザツめの事情があって――あ! 待ってください、駆紋さんっ」
碧沙はチームメイトに「ごめんね」と言い残して戒斗たちを追いかけた。
戒斗は最寄りの閉鎖工場地帯にシャプールを連れ込み、服を元通りに交換した。
ちなみに碧沙は彼らが着替える間は外で待っていた。ここまで来たら顛末を見届けたい気がした。
やがて戒斗とシャプールが廃工場の中から出て来た。
「やっぱりそのコートじゃないと駆紋さんって気がしませんね」
「――ふん」
コートの裾を翻して背中を向けた戒斗に、シャプールが叫んだ。
「カイトみたいに! ……自由に生きてみたかったんだ」
自由に。
そのフレーズは呉島碧沙の深いところを大きく揺さぶった。
(わたしも、もともとダンススクールに通い始めたのは、貴兄さんの目の届かない世界に出てみたかったからだった)
咲が、みんなが、自分を「ヘキサ」と呼ぶ。そう呼んでくれる時は、「呉島のお嬢様」でも「ユグドラシル・コーポレーション重役の娘」でもない、「ただのヘキサ」でいられた。その時間の何と解放感に満ちて、幸福だったことか。
「とぼけるな。自分の命が狙われているのが分かっていて俺と入れ替わったんだろう?」
「命? 僕の?」
シャプールは本気で意味が分からないという顔をした。
「駆紋さん、待ってくださいっ。なにも今言わなくても」
「今言わないでいつ言うんだ。これはこいつの問題だ。それともお前は、何も知らせないままこいつを帰してみすみす死なせて構わないのか?」
その時、黒い車が工場地帯に走り込んできた。
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