斬月編・バロン編リメイク
リトル・オードリー危機一髪
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碧沙(体は咲)は黒服の男たちに促されるまま、ホテルの一室に入った。
両手は後ろ手に縛られているし、何より気絶した戒斗が一緒だった。碧沙には大人しく彼らに付いて行く以外の選択肢がなかった。
(ううん。選択肢ならもう一つあった。わたしがしなかったってだけで)
――現在の碧沙は咲の体を使っている。咲が普段から持ち歩く品々を、今は碧沙が持っている。
咲がいつでもランドセルに入れている戦極ドライバーとロックシードを、碧沙が持っていたのだ。
(使うヒマがなかったっていうのもあるけど。『わたし』じゃそもそもベルトが着けられないかもっていうのもあったけど。一番は、わたしが使っちゃいけない気がしたから)
黒服の男たちが、気絶した戒斗を奥へと引きずっていく。
碧沙はそれに付いて部屋の奥に進み、ソファーにビスクドールのように座らされた少女を認めて――愕然とした。
「咲ッ!?」
駆け寄ろうとして、前のめりに転んだ。幸い床は上質なカーペットだったためケガはない。
ソファーの上にあるのは碧沙の本来の体であり、今は親友の咲が宿る器だった。
眠っているのか気絶しているのかまでは、ここからでは分からない。そばへ行って咲の安否を確かめたいのに、両手が使えないせいで立ち上がることもできない。
気絶した戒斗は咲(体は碧沙)のすぐそばに投げ出された。
「シャプールのほうは予定通り事故に見せかけて。呉島の令嬢と目撃者の娘は、二人仲良く永遠の行方不明者になってもらいましょう」
シャプール。その名を碧沙は知っていた。本当なら碧沙が今日このホテルで会うはずだった要人だ。男たちはそのシャプールという人物と戒斗を人違いしているらしい。
「――ずさんですね」
一人だけ執事ルックの男と、黒服たちの目が、一斉に碧沙(くり返すが体は咲)に向いた。
「日本の警察を無能とでも思ってるんですか? 一日にひとつの街で3人も人が死んだら、タイホしてくださいって言ってるようなものです。それと。『わたし』はともかく、『呉島』のネームバリューをなめないでください。呉島家の人間に手を出したら、全ユグドラシルがだまってませんよ」
こういう家名をふりかざす真似は普段なら絶対にしないのだが、咲と戒斗の命が懸かっている。
この場で意識があるのは碧沙だけで、つまり男たちのの注意を引いて時間稼ぎができるのも碧沙だけ。
この体が碧沙のものでなかったとしても、「呉島碧沙」は最期まで生きるための努力をやめない。
「悪いが俺は別人だ」
黒服たちが倒れた。
両手が自由になった戒斗が黒服たちを叩きのめしたのだ。
「ヘキサ! だいじょうぶ?」
「咲っ」
咲(くり返すが体は碧沙)が、碧沙の縄を解いて
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