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外伝・少年少女の戦極時代
斬月編・バロン編リメイク
流行ってます?
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だ。
 碧沙は口を手で押さえたが、一度出した言葉は引っ込められない。

「――お前、室井じゃないな」

 ばれた。完膚なきまでに完璧に。相手が駆紋戒斗であったのがせめてもの救いか。

「はい。わたしは咲じゃありません。あの、おどろかないで聞いてくださいね。ほんとのことしか言いませんから。わたし、ヘキサです、呉島碧沙なんです」
「……冗談にしてはタチが悪い」
「ですからっ。ほんとのことしか言わないって言ったじゃないですか」

 値踏みとも睨みともつかない戒斗の視線を、碧沙は内心怯えつつも真っ向から受け止めた。

「……わかった。とりあえずお前は室井じゃない。これは認める。お前が本当にヘキサかどうかはこれから見極める」
「! はい! 信じてくれてありがとうございます!」

 戒斗はベンチから立ち上がり、車道に出る道を歩き始めた。

 カツカツ。てふてふ。

「おい――何で付いて来るんだ」
「え? 駆紋さん一人だとあぶなっかしいからですけど」

 戒斗のことだ。どこへ行くにせよ、トラブルを起こしてザックやペコを心配させるに決まっている。ここは碧沙が戒斗を監督すべきだ。

「はあ……勝手にしろ」
「はい。勝手にします」

 車道に出たので、脇の街路を碧沙は戒斗と並んで歩いた。

「ところで今日はどうされたんです? そのカッコ。いつものコスチュームじゃないんですか?」
「盗られた。今から取り返しに行く」

 言葉少なな戒斗から、持ち前の粘り強さで聞き出したところによると――

 戒斗は少し前に、何と彼と全く同じ顔をした男と出会い、催眠スプレーを嗅がされて気を失っている最中にチームユニフォームを盗られて、その男のスーツを着せられていた――と。

「それってリッパに犯罪ですよね……それにしても、駆紋さんにそんなことして、その人、こわいもの知らずってゆーかダイタンってゆーか」

 自分と咲といい、戒斗とそのそっくりさんといい、この冬は入れ替わりが流行っているのだろうか?

「――――」
「あの、駆紋さん? わたしの顔になにか付いてます?」
「室井の顔で敬語なのも『さん』付けで呼ばれるのも異様にしっくり来ないと思ってな」
「あー、わかります。咲、男の人を『さん』とか『ちゃん』で呼ばないのがマイルールですから」

 ――その、他人からすれば拘り所でもなんでもないそれが、室井咲の固い自戒によるものだと、碧沙はよく理解していた。

 キュキキィ!

 すぐ横の車道で、碧沙にとっては見慣れた黒くて長い車が停まった。
 黒い車から降りてきたのは、黒服の男が二人。

「お坊ちゃまっ」

 黒服たちは戒斗に対してそう呼びかけた。お坊ちゃま。何とも駆紋戒斗に似合わない形容だ。


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