デューク&ナックル編
挿話 いとけなき雪夜
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こんばんは。この家の子かな」
碧沙は頷いた。
「ちょっとだけ、しゃがんでくれますか」
「ん。何かな?」
しゃがんだ青年に対し、碧沙は自分のマフラーを外して青年の首に巻いた。
「あったかくしてないと、かぜ、ひいちゃいます」
青年はぱちぱちと目をしばたいた。
「――キミ、この家の子なんだよね。名前は?」
「クレシマヘキサ。6さいです」
「僕は戦極凌馬」
リョウマと名乗った青年の顔が親愛なるものへと変わった。
「ひょっとして、キミのお兄さんは呉島貴虎かな?」
「たかとら……たか兄さん、の、おともだちですか?」
「そうだよ。トモダチ。今日会ったばかりだけどね。最高の友人になれると信じてる」
リョウマの手が碧沙の頭を柔らかく撫でた。
兄以外にこういうスキンシップをされたのが初めてだった碧沙だが、ふしぎとイヤだとか怖いとかは感じなかった。
(だって、わかる。このひと、たか兄さんがダイスキだ)
「兄さんのこと、よろしくおねがいします」
「任せて。キミの兄さんは僕が責任を持って――最高の場所へ連れて行ってみせるから」
リョウマの言っていることの意味は、碧沙にはまだ難しくて、きちんと理解できなかった。
それでも長兄に彼のような素敵なトモダチが出来ただけで、碧沙にとっては、満面の笑顔になるくらいに喜ばしかったのだ。
******
――特記する。
ヘルヘイム抗体保菌者である呉島碧沙には、ある二つの特徴が見られる。
一つは、嗅覚の発達。そしてもう一つは――直感力の高さである。
この項では後者について言及する。
ここで言う「直感」とは俗に言う「勘のよさ」である。精度はウソ発見器といって障りない。
しかしその能力は決して透視だの千里眼だの未来予知だののオカルティックな超常能力ではない。危険察知のために発達した観察眼の延長に過ぎない。
ゆえに――人の心変わりを見抜くことは、彼女にはできない。
例えば、いずれ将来的に裏切るとしても、出会った時に最大の友愛と敬意を向けたことが真実なら、彼女はその相手を「危険なし」として信用してしまうのだ。
[故・戦極凌馬の手記より抜粋]
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