デューク&ナックル編
晴れ攫う空
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上向いた時がない。
「ありがとな。咲」
「どしたの、急に」
「ネオ・バロンに乗り込んだ時。助けてくれたろ」
咲が大きく目を瞠った。その様は、ひた隠していた罪を暴かれた者のそれだった。
長い沈黙を置いて、咲がようやく声を出す。
「怒られるかと、思った」
(……撫でくり回したろかこのガキ)
ザックの偽らざる本心である。決して不埒な意味ではなく。そんなことずっと気に病んでたのかこのバカとの気持ちを込めてそうしてやりたかった。実行したら社会的地位が終わるのでできないが。
そして同じくらいに、「それ」をこんなコドモに気に病ませてしまった己を、オトナとして恥ずかしく思う。自分のしたことが正しいか間違いかを悩むのに、オトナもコドモも関係ないのに。
だからせめて、遅くなったとしても、今贈れる最大の感謝を。
「怒らねえよ。――ありがとう」
咲はやっと、本当に、笑った。
「なあ。本当に乗り込む気か? シュラが言ってた“黒の菩提樹”とかいう組織に」
――駆紋戒斗が個性的すぎて忘れられない男なら、その男は無個性でありすぎたために忘れられない、そんな人間だった。
シュラは、ザクロやバナナのロックシードを渡された相手を、そう評した。
狗道供界。
ユグドラシルの残党も構成員に含まれるテロ組織、“黒の菩提樹”のリーダー。
不思議なことに、地下闘技場の試合の勝者に渡すロックシードの補充が必要になると、供界はまるでそれを知っているかのように、タイミングよくシュラに連絡してきた。そして、無償でザクロのロックシードが詰まったアタッシュケースをシュラに渡した。
さすがに不気味に思ったシュラは、ネオ・バロンの手の者に供界を尾行させたこともあったが、誰もが失敗に終わった。曰く、供界がふいに消えてしまった、と。
「うん。行くとしたら、あたしと貴虎お兄さんの二人じゃないかな。城乃内くんにはお店のお仕事あるし、光実くんはペコくんとこれからチームバロンの立て直しに忙しくなるって言ってたから」
付いて行けたら。せめてザックの退院を待ってはくれないか。そうすれば戦力は3人に増えるのに。
対し、咲の答えは清々しかった。
「あたしから貴虎お兄さんにオネガイしたの。またネオ・バロンみたいなビートライダーズじゃないチームが出てくる前に、一分一秒でも早く、って。あたしも、あたしだって、ビートライダーズのリーダーの一人だから」
――そういう少女だ。室井咲は。彼女が小学生だった頃からよく知っていたではないか。
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