ライダーズ・ロジック @
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大切な仲間に暴力を振るった挙句、大切な場所から自分を追放した、憎い憎い略奪者。
シュラにとって、駆紋戒斗はそういう男だった。
そんな憎い男の下に付き、シュラなど最初からいなかったかのように戒斗に傾倒していく元仲間たちは、シュラには直視に堪えなかった。
傾倒したばかりか、かつて戒斗が「卑怯」と切り捨てた不正を他のビートライダーズのチームに対して行うザックとペコを知り、アザミと二人、悔し涙を流したこともあった。
だから、シュラは一つの覚悟を固めた。
強くなる。
駆紋戒斗と初めて会ったあの日、自分がもっと強ければ、チームもチームメイトも取り上げられることはなかった。ましてやチームメイトたちを卑怯者に貶めることもなかった。
駆紋戒斗がチームバロンを脱退したと聞いて、その覚悟はさらに頑なになった。
駆紋戒斗がいない今、チームの仲間たちを導けるのはシュラだけ。
遺憾ながらも“バロン”となってから実力を上げた彼らを、束ねられるだけの強さが、シュラには必要絶対条件だった。
体を鍛えた。心を練った。
結果として、シュラはその身一つで地下闘技場のチャンピオンに登り詰め、挑戦者に心酔されるだけの男となった。
ザックやペコ、かつてのチームメイトを導くに足る器になった。
シュラ自身をここまで押し上げる契機となった駆紋戒斗に、感謝し、敬意を示す寛大ささえ手に入れた。
もう誰にも「卑怯者」とは言わせない。我が強さはここに至れり。
熱狂する観客の中から、一人だけ冷めた顔でリングに出て来たザックを認め、シュラは歓迎の笑みを刷いてザックに歩み寄った。
…
……
…………
大勢の観客が熱狂する闘技場で、ザックだけはひどく冴え冴えとした気分でそこにいた。
シュラが競技賭博の報酬として勝者に、もうあるはずのないロックシードを渡した瞬間でさえ、疑問より想いの渦巻きのほうが大きかった。
「一人の男がこの国を去った! その男の名前は、駆紋戒斗。彼はチームバロンを作り、強さを求め、強さで世界を変えようとした! 彼の名前を叫んで讃えろ」
観客から巻き起こる戒斗コールに、ついにザックは耐えられなくなった。否、耐えるのを、やめた。
ザックは観客を割ってリングに出た。
「――これはこれは懐かしい顔だ」
シュラは親愛を浮かべてザックに歩み寄り、昔よくしたようにザックの肩を掴んでリング中央へと招いた。
シュラがザックを観客に紹介する段になって、ザックはシュラの腕を振り解いて、ステージに上がった。そして、動揺もあらわなペコの手を掴んで連れて帰ろうとした。
ペコが、ザックの手を振り解かなければ。
「……
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