ライダーズ・ロジック @
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俺はここに残る」
「どうして……っ」
「本人の意思を無視するわけにはいかねえなあ」
シュラがステージに上がって来て、男たちの一人から薄いノートPCを受け取って開いた。
画面にユグドラシル・タワーに似た塔の3D映像が表示された。
「間もなく救済の時がやってくる」
シュラは語る。塔の名は、セイヴァーシステム。要約するに、かつてのユグドラシルが有していたスカラーリングとそう変わらない殲滅兵器だった。その上、シェルターに隠れた一握りの人間だけが助かるという点まで同じと来た。
「どうだ、ザック。俺たちの仲間にならないか。戒斗はお前たちを置いて行った。だから俺がお前たちを束ね、救済へ導く。そうできるだけの強さを俺は手に入れたんだ」
怒りで熱した思考ではなく、冴えた思考でいたから、ザックはシュラを改めて見つめ直すことができた。
シュラのオーラはリーダーのそれだ。戒斗とも、自分が知るビートライダーズのどのリーダーとも異なるが、今のこの男は指導者としてふるまうにふさわしいものを持っている。
「断る」
だからといって、それがそのまま賛同する理由にはならない。
「――だったら帰すわけにはいかねえな」
シュラは笑みを消し、指を鳴らした。
ステージ上にいるネオ・バロンの構成員がザックを取り囲む、その前に、ザックはステージから跳び下りた。
だが、暗がりで見えなかった位置から、別の男たちが出て来て、今度こそザックを包囲した。
男たちがザックに襲いかかってきた。この人数、避けるだけで精一杯だ。突破できない。
徐々に回避の精度も下がり、男たちのパンチやキックがザックの全身の至るところを痛めつけていく。
「お待ちなさいッ! 一対大勢なんて卑怯じゃなくて?」
観客の中から出て来たのは、凰蓮・ピエール・アルフォンゾだった。
「ここはワテクシにお任せなさい」
凰蓮は上着を脱いで適当な観客に預けるなり、猛然とネオ・バロンの男たちに挑みかかった。
凰蓮と示し合わせたようなタイミングで、今度は城乃内秀保が出て来て、ザックの腕を肩に回させて立ち上がらせた。
(逃げねえと。でも足が。俺の足はもう)
パパン! パパパパパン!
クラッカーの弾ける音がして、曲がった楕円のプチ爆弾が爆ぜた。
紙吹雪がザックに振りかかる。すると、動かせない、と思った足にほんの少しのパスが開通した。
ザックは全神経を開通したパスにつぎ込んで足に命令し、立ち上がった。立ち上がれた。
城乃内の肩を借りて闘技場から逃げて走りながら、ザックは自身の根底にあったものに気づいた。
気づいて、泣きたかった。
(何だよ。動く、動くじゃねえか、俺の足。オーディション
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