暁 〜小説投稿サイト〜
外伝・少年少女の戦極時代
デューク&ナックル編
リトルスターマイン、再始動!
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が。

「ほんとにそれが幽霊だったとしても、シドさんじゃないのは確か。あの人、意地でも幽霊になんかなるもんかって思うタイプだったからね――」
「――そうね」

 碧沙は菜箸を置いてコンロの火を切った。フライパンの余熱でじゅうじゅうと焼ける青椒肉絲は、空々しいほど香ばしい。

 ピロリン♪

 カウンターに置いてあったスマートホンが鳴った。新着メッセージだ。
 碧沙はエプロンを外して、スマートホンのアイコンをタッチした。

《ただいま。久しぶり》

「ザックさん……」
「え、ザック?」

 ――ザック。ダンスの本場ニューヨークへ渡った、元チームバロンのリーダーにして代表者。そして、アーマードライダーナックルの変身者。

《いま空港出た。これからネオ・バロンに行ってペコを連れて帰る。吉報、待っててくれよ》

 碧沙は慌てて、無自覚のままに光実の腕に取り縋った。

「光兄さん!」
「ちょ!? 鍋ひっくり返るって!」
「これ!」

 碧沙はスマートホンを光実に突き出した。
 光実は画面を覗き込み――小さく息を呑んだ。




 一方その頃の咲たちはというと――

「……やばーばばい」

 ダンススクールでの休憩時間。スマートホンをいじっていたナッツが、コアなお笑い芸人のネタを呟いた。
 ナッツがそういうネタに走る時は本気で「あちゃー」な事態だと、付き合いが長い咲は知っていた。

「――ナッツ。なにが起きたの」
「ザックさんがニューヨークから帰って来て、その足でネオ・バロン行っちゃったわ」
「マジでぇ!?」
「さらにトモから新着。ヘキサから連絡来たから、ミッチさんに迎えに来てもらって三人で追っかけるってさ」

 咲は学校指定のボストンバッグを開いて中身を確かめた。

 咲用にイニシャライズされた戦極ドライバー。ドラゴンフルーツ、それにパッションフルーツとヒマワリとダイズの錠前。ゲネシスコア。ピーチのエナジーロックシード。――必要な物は全て揃っている。

「行くか、咲?」

 モン太がうずうずした様子で尋ねてきた。モン太だけではない。チューやんもナッツも、顔にあるのは恐れではなく、イタズラ決行前のコドモのワクワク感。

 本当にどいつもこいつも、小学生だった頃からちっとも進歩しやしない。
 だから、室井咲は笑ってこう答えるのだ。

「あたりまえのこと聞かないで」

 ナッツもモン太もチューやんも、咲のものと同じボストンバッグに、床に散らかしていたジャージの上やら何やらを詰めて、立ち上がった。

 全員でドアへ向かった。休憩時間のタバコ一服を終えてレッスン室に戻って来た講師に、咲たちはすれ違いざま、

「「「仲間のピンチにつき早退します!」」」

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